「もうノブだけでいい。泳がしちゃダメだ」元日本赤軍最高幹部・重信房子逮捕、その“迫真の舞台裏”――てれびのスキマ「テレビ健康診断」

「武者震いみたいに相手が震えて『奥平房子ですか』、『重信房子ですか』ともう1回聞き直して、『それだったらなに?』って私も言ったんですけど、そこで逮捕された」 自身の逮捕劇を臨場感たっぷりに語る元・日本赤軍最高幹部・重信房子(なお、奥平は偽装結婚して得た名字)。「日本赤軍vs日本警察」をテーマに取り上げた『未解決事件』では、重信の他にも、警察側からは、彼女を「不倶戴天の敵」と語る國松孝次や、警察庁警備局だった亀井静香、赤軍を追う調査官室に配属されていた平沢勝栄らも証言。赤軍側からも、足立正生が登場。テロリストに語らせる是非はあるが、当事者たちの生々しい証言は、さすがに見応えがあった。 前編では、日本警察が屈辱を味わった70年代のクアラルンプール大使館占拠事件、ダッカ・ハイジャック事件を紐解き、後編では、その事件以降、設立された極秘部署・調査官室=赤軍ハンターとの攻防を追った。やはりその情報戦は苛烈。まだその伝手やノウハウがなかった警察は苦しんだ。極秘であったはずのその行動も、重信に言わせると様々なネットワークから、情報が集まっていた。責任者に「金歯がある」というような特徴まで共有されていたという。一方、日本の警察は他国の情報機関の人間となかなか会えない。だから現地の重要な施設であえて写真を撮り、スパイ容疑で拘束され、取り調べ中に身分を明かして関係を築いていったというから、いかに厳しい状況だったかがよくわかる。それでも、次第にメンバーを逮捕し追い詰めていく。 そして遂に、20年以上内偵を続けていた日本の支援者周辺の変化を敏感に察知し、重信を大阪で発見する。だが、そこで難しい判断に迫られたという。実は数々の事件に関与した坂東國男も大阪に潜伏しているという情報を掴んでいたのだ。「もうノブ(重信)だけでいい。泳がしちゃダメだ」と逮捕に踏み切った。その迫真の舞台裏に不謹慎ながら、ワクワクしてしまった。 超法規的措置で、殺人犯を含む6人が釈放されたダッカ・ハイジャック事件の後、メンバーから「こういう闘争は絶対にやめよう」という意見が出たことを重信は明かしている。「“人命は地球よりも重い”というべきは、私たちなんじゃないかと。それが権力の側に言わせてしまっている」と。そして解放された殺人犯からも「殺しやたたき(強盗)が革命の言葉で許されるなんて、革命って便利なもんだな」と言われた。自らが逮捕されたことを「私の敗北」と語った重信だが、本当の意味での「敗北」の瞬間は、その矛盾を突きつけられたことではなかったか。番組には追う者と追われる者、双方の執念と矛盾が克明に映し出されていた。 INFORMATIONアイコン『未解決事件』 NHK総合 土 22:00〜 https://www.nhk.jp/g/ts/57615R8KYY/

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