米中が近似した国に?国際秩序が揺らぐ今こそ、日本が持つべき「国家の品格」

中国共産党の圧政から逃れようと、ビザを必要としない南米エクアドルなどから、数千キロ・メートルに及んで国境を越え、米国への命がけの逃避行に身を投じた中国人たちが、亡命申請を却下され、強制送還されるケースが増えている。この背景にあるのは、民主主義国であるはずの米国で、側近たちもトランプ大統領には異論を言えないというような「恐怖政治」が広がりつつあるからだ。 昨今、こうした米国の情勢もあってか、私が訪ねた韓国やタイ、そして日本にも、中国共産党政権の弾圧から逃れてきた中国人が増えている。例えば、2025年10月、およそ30人の非公認教会(家庭教会)「シオン教会(錫安教会)」の牧師・教職者が一斉に拘束された。私は11月、韓国とタイで、中国から逃れてきた家庭教会の関係者に会った。難民申請が認められなかった彼らは、強制送還を拒否して某所で待機し、子どもたちは児童福祉施設や支援者の家庭で保護されている状態だった。ソウルに出張中に中国で家族が拘束され、自らは帰国できなくなった牧師もいた。 タイではビザの更新が認められず、不法滞在の状態だったジャーナリストがタイの警察当局に逮捕された。中国の地方政府の腐敗ぶりを告発したこのジャーナリストは、身の危険を感じて中国を出国した。最初の1年はタイで合法的な身分を確保していたが、その後、理由も分からないまま、ビザが更新できなくなった。現地の状況に詳しい私の中国人の友人は、彼が告発した地方政府がタイ当局とつながっており、圧力をかけた可能性があると指摘する。 感銘を受けたのは、タイに滞在する若い中国人たちがタイ人の弁護士と連携し、このジャーナリストがタイに逃れなければ中国で逮捕された可能性があることを警察に証明し、ジャーナリストを釈放させたことだ。ジャーナリストは現在、第三国に出国する手続きを行っている最中だという。 厳しいゼロコロナ政策や言論統制に抵抗したため中国で逮捕され、釈放された後にタイに逃れてきた若者たちもいた。異郷での生活に順応できず、うつ病を患う者もいるが、互いに助け合って生活している。故郷に戻れないまま不安定な生活を送る中で、自ら命を絶ってしまった者もいた。亡くなった若者の遺骨は、中国の家族が引き取りに来ることもなく、若者たちが暮らす家に保管されていた。その家にそっと置かれていた白い花を見て、私は胸が締め付けられ、どうしようもなく切ない気持ちになった。 現在日本にも、教会関係者、人権派弁護士、調査報道記者、リベラル知識人、社会派の芸術家など、故郷に戻ることのできない中国人たちが暮らしている。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする