『リブート』松山ケンイチが見せた究極の憑依 鈴木亮平に託された大切な人への思い

面白いドラマとはどんなドラマだろうか? 最高のキャスティングと脚本、演出が融合している、伏線を全て回収している、メインキャラに感情移入できる、没入感が半端ない、俳優が好き……など基準は人それぞれで異論は認める。一方で、そんなこと全部抜きにして、シンプルに何の先入観なく「面白い」と思える作品がある。もしそう感じるなら、それは理屈抜きで面白いドラマではないだろうか。 前置きが長くなった。1月18日にスタートした日曜劇場『リブート』(TBS系)は、理屈抜き、いや理屈込みで面白いドラマだ。筆者が得た事前情報は3つある。“なりすまし”もので、複雑なストーリーを持つ、鈴木亮平が出ている、だ。以下、実況を兼ねてお伝えしたい。 冒頭で鈴木亮平が出てきた。ぶっ倒れている。大胸筋。戸田恵梨香も出てきた。何やら物騒な気配が漂っている。儀堂歩は刑事だが、ワル系の鈴木亮平は嫌いじゃない。ワケありっぽいけど、これは伏線なのだろう。 松山ケンイチが登場。役名は早瀬陸、パティシエで日曜劇場と聞くと、あのドラマが頭に浮かぶけれど、ここでは割愛。儀堂が訪ねてきて、妻の夏海(山口紗弥加)の死体が見つかったと伝える。悲しみに包まれる早瀬家。そうこうするうちに、早瀬は警察で取調べを受けた。妻殺しの嫌疑をかけられているのだ。 儀堂の話が腑に落ちない。儀堂は悪徳刑事じゃないのか? 逮捕されそうになった早瀬が逃げる。逃げるマツケンと追う池田鉄洋。てっきり鈴木亮平がアクション要素を一手に担うと思っていたので、これは嬉しい誤算だ。早瀬が、儀堂に言われたとおりに自宅へ向かうと、室内は何者かによって荒らされていた。 戸田恵梨香演じる幸後一香は公認会計士。マネーロンダリングを請け負っていた一香と夏海は同僚だった。ただし面識はない。夏海の死には会社がらみの悪事が関係している。そんなこんなでドラマは進み、通常の尺なら第1話が終了するところで、ようやく一香の口から飛び出したのがタイトルの「リブート」だ。 リブート【reboot】[名]再起動:コンピューターや周辺機器の使用を中止し、起動しなおすこと。リブート。リスタート。(大辞泉より) 人生をリブートすること。死んだはずの人間が、他人の戸籍を手に入れて、別人として生きることはドラマの設定ではよくある。筆者は完全に虚を衝かれた。てっきり鈴木亮平演じる儀堂が、鈴木亮平演じる別の人間になると思っていたので、マツケンが中身は早瀬のまま顔を儀堂に変え、中の人である演者もそっくり入れ替わる。一人二役の反対で、同一の人格をマツケンと鈴木亮平が演じているのだ。 マツケンが物理的に全身生まれ変わるように“なりすまし”ている。究極の憑依演技だ。包帯を外した早瀬が目尻の下がった鈴木亮平になっていたときは、思わずニヤリとしてしまった。儀堂になりきろうとして四苦八苦する鈴木亮平の早瀬がコミカルで油断していたら、いきなりピンチになって焦る。マツケンから鈴木亮平への移行がスムーズなので没入感を妨げない。 リブートのもう一つの意味。「フィクション作品において、シリーズにおける連続性を捨て、新たに一から仕切り直すことを意味する用語」(Wikipediaより)。マツケンの物語を、中身を変えずにそのまま鈴木亮平のドラマに変えた今作は、ドラマの構造自体にリブートが仕掛けられている。 闇組織のトップに北村有起哉、その下に永瀬廉(King & Prince)と連続ドラマ初出演の藤澤涼架(Mrs. GREEN APPLE)を配役するなど、キャスティングでも話題の今作。第1話のタイトルは「至愛」である。早瀬が一香と並んでシュークリームを食べるシーンでは、人が人を思うことの美しさを描いており「これは良いドラマだ」と直観した。

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