水戸ネイリスト殺害事件は発生から21日目、急展開を見せた。 茨城県水戸市在住のネイリスト小松本遥さん(31)が自宅で殺害された事件で、会社員の大内拓実容疑者(28)が殺人の疑いで逮捕された。大内容疑者は小松本さんの元交際相手だったとみられ、小松本さんのアパートから車で20分ほど離れた城里町に住んでいた。 大内容疑者を知る人物は「あいきょうはいい。人付き合いはいい。あいさつはする。(両親の)仕事もよく手伝っている。休みに稲刈りとかやるでしょ。『よく手伝っているね』と言うと、『コメ食ってるから』と言って……」と語る。 その後明らかになったのは、小松本さんの居場所を探していた大内容疑者が、位置情報発信機を悪用し、特定に至ったとされるストーカー殺人の可能性だった。 元徳島県警捜査1課警部の秋山博康氏は事件発生当初、自身の捜査経験からこう語っていた。「首を刺しての殺害は犯人に一方的な強い恨みがある場合が多い。警察はすぐさま被害者のスマホを解析し、交友関係などを洗い、早い段階で容疑者の特定はできていたはず」。 事実、警察はスマホから大内容疑者を割り出し、1月11日には大内容疑者の自宅から車が押収されるのを、近隣住民が目撃していた。 「通常逮捕の場合、現場での指紋や足跡、DNAなどの証拠をそろえる必要があり、時間を要します。その間、警察は容疑者を24時間体制で徹底マークしていたのは言うまでもありません」(秋山氏) この事件には、発生当初から謎が多く残されていた。事件を振り返る。2025年の大みそか、新年を迎えようとしていた午後7時過ぎのことだった。 茨城県水戸市のアパートに小松本さんの夫が帰宅すると、鍵は閉まっておらず、玄関の内側で血を流して倒れている小松本さんを発見した。小松本さんは首を刃物で刺され、頭を鈍器のようなもので殴られていたという。小松本さんは妊娠中で、体には腹部を守るためについたとみられる傷などが数十カ所あった。 その日の行動はこうだった。小松本さんは夕方外出し、その後夫も仕事に向かった。午後5時前、小松本さんは外出先から夫に『いまから帰る』と連絡。午後7時過ぎ、帰宅した夫が発見。警察は午後5時20分ごろから午後7時15分ごろの間に殺害されたとみている。 ここで浮上する謎は、「なぜ犯人は夫が不在となり、小松本さんが1人となる時間を把握できたのか」だ。 秋山氏は「容疑者は隙があれば一気に殺害するという強い意志があり、何日も被害者方を下見していた可能性があります。一気に殺害するために鈍器と刃物を準備し、何度も下見をして、夕方は被害者が1人になることを確認。当日は近くで見張りをして、夫が外出したのを確認後、一気に犯行に及んだものと考えられます」と推理する。 捜査関係者によると、以前小松本さんが働いていた飲食店で2人は出会い、2024年に交際が始まり、その年のうちに別れたという。 2人を知る飲食店スタッフは「『初めてできた彼女』って言っていた。普通の仲がよいカップル」、大内容疑者の友人は「『彼女ができたんだよ』っていう話は聞いていました。2024年あたりなんで、たぶんその辺だと思う。(話しぶりは)幸せそうでしたね。最初話聞いている時は」と証言する。 さらにその後も大内容疑者は連絡を続け、小松本さんは2025年の夏ごろにSNSなどをブロック。大内容疑者は10月から12月ごろにかけて、小松本さんの居場所を知人らに聞き回っていたという。 ではなぜ小松本さんの自宅を知ったのか。住所特定に使われた可能性として浮上したのは、ぬいぐるみだ。捜査関係者によると、事件の数日前、小松本さんの実家に“置き配”のようにぬいぐるみが届いており、その中には位置情報がわかる発信機が仕込まれていた。このぬいぐるみが実家から小松本さんの手に渡ったことで、発信器の持ち主は小松本さんのアパートを把握した可能性がある。警察は大内容疑者が実家に届けた可能性があるとして捜査している。 位置情報発信装置を悪用した事件は、これまでにも多数報告されている。2024年には、ファンがアイドルに渡したプレゼントにGPS発信装置のようなものが仕込まれていた。また、2022年には60代の男が、一方的に好意を寄せる20代の女性のリュックにGPS機器を入れ、位置情報を受信した疑いで逮捕された。 こうした悪質なストーカー行為が相次ぎ、2025年12月、ストーカー規制法改正により、紛失防止タグを無断で車や荷物に取り付け、位置情報を取得する行為が、規制対象に追加された。 総合探偵社ガルエージェンシーの吉田容之代表は、「依頼者が乗っている車両に、GPSや忘れ物防止タグのような発信機が取り付けられているかどうか。そういった可能性がある人たちが、ご相談にお越しいただいて、我々の方で調査するという感じが多い」と説明する。吉田代表によると、今も月に5、6件は調査の依頼があるという。 「うちにお越しになったのが、離婚後半年経過している女性の方で、離婚後、転居先も知らせていないし、勤務先も変えているのにも関わらず、買い物しているスーパーに突然、元配偶者が現れたり。スペアタイヤなど工具が入っている場所、おそらく皆さん車を購入してから開けない部分だと思うが、そこに(発信器が)入っていた。(発信機の発見は)最終的には目視で、車の下に潜ったりジャッキアップしたりして、つけられそうな場所を全部見て確認する感じだ」(吉田代表) 実は事件の4日前、12月27日に小松本さんから警察へ、ストーカー被害の相談電話があったという。「元カレからのストーカーみたいなことを相談するとしたら、どこの課に行けばよいですか」。その“元カレ”が大内容疑者を指していたかは今のところ不明だが、この電話で小松本さんは名前を名乗らず、切迫した様子はなかったとしている。 「ポイントは被害者が行ったとされる相談です。相談となれば、生活安全課の相談係の対応となります。相談ではなく、『ストーカー被害にあっているので被害届を出したい』と言うと、人身安全課が対応します。人身安全課は、ストーカー規制法の捜査をします」(秋山氏) 秋山氏によれば、去年川崎市で発生したストーカー殺人事件で、全国の警察は人身安全課を強化しており、事件捜査に強い刑事を配置しているという。 相次ぐストーカー殺人、警察に連絡まで試みたが、またも最悪の結果を生んでしまった。大内容疑者は「一切身に覚えがない」として容疑を否認している。 吉田代表が、被害にあわないための心構えを教える。「全く差出人不明の郵便物とか荷物は、なるべく自宅に持ち帰らないで外でチェックする」「身に覚えがなければ廃棄してしまう」「知らない人から送られてきたものは、まず家に持ち帰らない」「自分の身を守るためにはそういう心得が大事」。 (『ABEMA的ニュースショー』より)