タイ、ベトナム、中国……情緒あるかつての花街が、急激な多国籍化の波にのまれ、変貌しつつある。共生と混沌がもつれ合う、ディープ湯島の最前線に潜行した! * * * 【多国籍化する街の深淵】 「店でひとりで寝る。とても寂しい、とても怖い――」 昨年11月、東京・湯島にある個室マッサージ店で、タイ国籍の当時12歳の少女に性的サービスを強要したとして、同店の日本人経営者が逮捕された。 少女を置き去りにして出国した母親は12月にタイで、同店に少女を斡旋(あっせん)したブローカー役のタイ人の女も今年1月に日本で逮捕。 冒頭の言葉は、少女が寝泊まりしていた部屋の片隅から見つかったメモの一節だ。 人身取引の犠牲者が12歳という事件は、湯島で働くタイ人のコミュニティにも衝撃を与えた。タイ人が働くスナックを経営する日本人オーナーは、苦渋の表情でこう語る。 「10年以上前から、湯島にはタイ系の飲食店やスナックが増え、"リトルタイ"としても知られるようになった。 違法マッサージ店の摘発は過去にもあるが、12歳という年齢は聞いたことがない。逮捕された日本人も、ブローカーから紹介された際に『目玉商品にして稼げる』といった軽い気持ちで手を染めていたのではないか」 摘発後、事件があった個室マッサージ店はどうなったのか。12月、東京メトロ千代田線・湯島駅から徒歩1分の雑居ビル8階。ポストには店名のシールが貼られたままだが、人けのない薄暗い階段を上がりインターホンを鳴らしても、応答は一切なかった。 そんな中、逮捕された日本人オーナーが経営する別のタイマッサージ店が継続しているという情報を入手。 JR御徒町駅から徒歩5分ほどの場所にある個室マッサージ「N」だ。まずは電話をかけ、摘発された店で性的サービスの隠語として用いられていた「ジャップカサイ(睾丸[こうがん]マッサージ)はあるか」と尋ねると、電話口の女性は「オーナーが代わった。知らない」と即座に受話器を置いた。 後日、同店を訪れたが、40代とおぼしきタイ人女性による通常の施術のみ。違法なサービスは影を潜めていた。 【薬物、窒息死……。カオス化する街】