「人を信じたから」お金だけでなく心も奪われた、震える女性 特殊詐欺の卑劣な手口

検察官や警察官をかたる特殊詐欺で300万円をだまし取られた島根県浜田市内の50代女性が、中国新聞の取材に応じた。矢継ぎ早の電話と1カ月近いやりとりで追い込まれ、囲い込まれていったいきさつから、巧妙で卑劣な手口が浮かぶ。女性は今も自責の念に駆られ、思い出すたび手の震えが止まらない。 2025年11月7日午後、女性が経営する店に大手物流会社の担当者を名乗る人物から電話があった。女性は「またにしてください」と切ろうとしたが、相手は「あなたが送った荷物に現金や大麻、覚醒剤が入っていました」と切り出した。送り先が指定暴力団の組員だったとも指摘した。 身に覚えがなく「どうすればいいの」と困惑する女性に、「東京地検のホソカワ」を名乗る人物からすぐに電話があり「あなたの口座が特殊詐欺の資金洗浄に使われている。あなたにも報酬が支払われ、容疑がかかっている」と畳みかけた。 さらに「公安サイバー警察の大山」からも電話があり、翌日から「安全確認」と称して「大山」とLINE(ライン)でメッセージや通話によるやりとりが始まった。 女性は法律用語が頻出する通話内容をその都度メモした。「050」で始まる相手の電話番号を不審に思い、何度も家族や浜田署に相談させてほしいと伝えたが、「家族も事情を知れば共犯になる」「今回島根の警察官も逮捕されている」と止められた。「インターネット通信を監視している。検索した言葉もこちらですぐ分かる」とも。 店が続けられなくなったら、家族に危害が及んだらと思うと怖くなり、相談したり調べたりできなくなった。 一方で「大山」は「実はあなたが悪いことをしていないと信じている。国として守る」「インスタグラムを見た。愛されているお店なんですね」と寄り添うような言葉をかけ、女性が涙したこともあったという。 女性は3週間、容疑がかかっていると不安を募らせて疲弊。11月末に「何とかなりませんか」と懇願した。「大山」から「ホソカワが特殊な先行捜査をする」と300万円を振り込むよう返信を受けた。12月2日、怪しむ金融機関の担当者に「記念事業の準備金」と押し通して送金した。2、3日後、「大山」は連絡を絶ち、ラインのアカウントも消した。女性は同10日、浜田署に相談。被害が判明した。 「汗水流してためたお金。でも、まだ相手を悪いと思えていない。私が電話に出なければ。私が人を信じたから」。女性は手を震わせ、目を潤ませた。容疑者はまだ逮捕されていない。「もしかしてまだ向こうから店を見ているかも。相手が私の名前を知っていたから身近な人が関わっているのかもしれない」と恐れる。特殊詐欺はお金だけでなく、心も奪った。

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