みなさんは「鑑識」というお仕事をご存知でしょうか。 事件現場から見えない証拠を集め、犯人を追う警察の職種の一つです。 その鑑識にとって重要な手がかりとなる「足跡」、つまりあしあとの採取で、新しい手法を考案した警察官を取材しました。 事件現場には、さまざまな痕跡が残っています。 指紋、足跡、DNA。 目に見えないわずかな証拠を根気強く採取し、それを手掛かりに犯人の検挙、そして事件解決への糸口をつなげる仕事。 それが警察の「鑑識」です。 現在、徳島県警に所属する鑑識係員は36人。 専門的な知識と技術を駆使し、現場の証拠を集め、捜査を支えています。 そんな鑑識係員たちは、現場での捜査のかたわら、日々、新しい手法や機材の研究開発を行っています。 そんな日ごろの成果をお披露目するのが、県警が開く、年に一度の「実務研究発表会」です。 この発表会で2025年の最優秀賞に選ばれたのが、牟岐警察署刑事生活安全課・内藤孝巡査部長です。 (牟岐警察署 刑事生活安全課・内藤孝 巡査部長) 「まさかもらえるとは思っていなかったので、素直に嬉しかったです」 内藤巡査部長は2005年に県警へ奉職。 交番勤務などを経て鑑識を希望し、この道10年のベテランです。 今回、内藤巡査部長が考案したのが、絨毯などについた足跡を採取する新しい方法です。 (記者) 「一見どこを踏んだか私ではわからないんですが、ここからどういう風に足跡採取、進めていくのでしょうか」 (牟岐警察署 刑事生活安全課・内藤孝 巡査部長) 「このままでは見づらいと思うので、電気を消してみましょう」 「これで足跡を検索するのですが、先ほど踏んだ足跡、こちらになります」 (記者) 「電気を消して光を当てるだけで、こんなに浮かび上がるんですね」 見つかった足跡。 まず絨毯のような布生地では、一般的な「写真撮影法」で足跡を採取します。 (牟岐警察署 刑事生活安全課・内藤孝 巡査部長) 「見たまんまが記録できる」 しかし写真撮影は、三脚の設置に場所をとるため狭い場所での採取が困難です。 また正しい角度やピント、光の当て方などが難しく、経験が必要という課題もありました。 (記者) 「今回新たに考案したのはどんな方法?」 (牟岐警察署 刑事生活安全課・内藤孝 巡査部長) 「このシートを使って足跡が採取できるように研究しました」 これはポリビニルアルコールシートというもので、洗濯洗剤のジェルボールの膜にも使われています。 これを使ってどう採取するのでしょうか。 まず、足跡の上にシートをかぶせ、その周りを型枠で囲みます。 そして中に、石こうを慎重に流し込みます。 すると15分ほどで固まりました。 光を当ててみると。 (牟岐警察署 刑事生活安全課・内藤孝 巡査部長) 「足跡なんですが、ここに印章されているのを確認できますか?」 立体的な足跡が採取できました。 (記者) 「私の足跡からは、どのようなことが考えられますか」 (牟岐警察署 刑事生活安全課・内藤孝 巡査部長) 「一概には言えませんが、靴の大きさから女性かなとか、そういうのを考えながら」 「(現場では)一番最初に足跡から採取していくので、そこは大きなポイントになる」 足跡は、現場に残りやすい証拠の一つ。 足跡を見ることで、どこをどう動いたか容疑者の行動を特定できます。 (牟岐警察署 刑事生活安全課・内藤孝 巡査部長) 「最初にオブラートでこれをとろうって考えた人、ほんますごいなって思う」 これまでは、オブラートが使われていましたが、破れやすいため型どり自体が敬遠されがちでした。 オブラートより破れにくく、必要な性質を備えたポリビニルアルコールを採用したことこそ、内藤さんの「発明」だったのです。 (牟岐警察署 刑事生活安全課・内藤孝 巡査部長) 「(オブラートを使用する手法は)被害者の物を汚す可能性が高い」 「破れやすいというのがあるので、なので敬遠されていった」 写真ではなく、立体的に足跡を採取できることは画期的な進歩でした。 (牟岐警察署 刑事生活安全課・内藤孝 巡査部長) 「この手法を知っていると知らないでは、現場で対応できる幅が変わる」 「これ知らんと、どうしよう写真撮影しかないなでは底力が違う」 「引き出しの多さと、鑑識だからそういうところ憧れる」 鑑識の仕事への誇りと熱意。 そして、常によりよい方法はないかと考える探求心が実を結んだのです。 (牟岐警察署・濵幸司 副署長) 「普段から事件現場で、いかに誠実かつ丁寧に鑑識活動しているか」 「課題に対して研究熱心であるか知っているので、(今回の受賞を)牟岐署員みんなが非常に喜んでいる」 「自分の取り組み姿勢を背中を見せながら、若手を引っ張っていくことを期待しています」 (牟岐警察署 刑事生活安全課・内藤孝 巡査部長) 「先輩方の作業ひとつひとつがとんでもない技術持っているし、知識も深いし、そういう憧れが現実を目の前にして尊敬に変わっていった」 「鑑識奥が深いので、素晴らしい職業につけたと思っている」 「大事にしているのは、現場で被疑者につながる資料をとるということだけ」 「自分の実績とかよりかは、犯人につながる資料をいかにとれるようになるかを研鑽していきたい。そういう鑑識でありたい」 ひとつの発明が、これまで届かなかった真実に手を伸ばし、犯人逮捕へとつながる鑑識という仕事。 その地道な作業には、職人の意地が込められています。 今回は、警察の仕事でも、刑事などドラマの主役になるような職種とは違い、いわば「裏方」ともいえる鑑識のお仕事にスポットを当てました。