「警視庁捜査2課です」。そう名乗る男からの電話が、2月17日正午ごろ、岩手県内の警察署に勤務する現職警察官のスマートフォンにかかってきた。 番号は「+」から始まる国際電話。末尾は警察署の番号を思わせる「0110」だった。署内で仕事中だった警察官は、全国的に急増している「ニセ警察詐欺」を疑い、ひそかに録音した。 県警は、このやりとりを被害防止に役立ててほしいと、公式YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/channel/UCAtflWY300rtK_ZNjwWXWgQ)やSNSで公開した。 音声データによると、男は「高知県警から捜査協力の要請を受けている」と説明。マネーロンダリング(資金洗浄)事件の捜査だと明かし、「あなたが事件に巻き込まれているか、加担している可能性がある」と告げた。 警察官は、男が主犯格として挙げた人物について「心当たりがある」と答えるなど、あえて男の裏をかく返答を重ねた。男は次第にしどろもどろになり、最後は「高知県警に行ってください」と言い捨てるようにして、自ら電話を切った。 警察庁によると、ニセ警察詐欺は2025年に1万936件発生し、被害額は約985億円。県内でも7億円を超える被害が確認されている。 電話や通信アプリで接触し、出頭要請や事情聴取を装って不安をあおる。「捜査」「潔白の証明」などを理由に、金銭の話に移るのが典型的な流れだ。 県内でも、実際に多額の被害が出ている。 紫波町の30代男性のスマホに昨年11月、「総務省のタケダ」と名乗る男から、「あなたの携帯電話から迷惑メールが大量に送信されており、今日中に預金口座が凍結される」と電話があった。 男性は教えられた担当警察署をかたる番号に電話。応対した男の指示で、通信アプリ「Signal(シグナル)」のビデオ通話を始めた。画面には、制服のようなものを着た男が現れ、「警察手帳」や「逮捕状」を示したという。 その後、「全額返金するから、金融識別番号の調査に協力してほしい」と持ちかけられ、金融機関の窓口やネットバンキングで8回にわたり計4500万円を振り込んだ。 同月下旬、「残念ながらゴリゴリに詐欺です。4500万円ご馳走様(ちそうさま)でした。どんまいです」とメッセージが届き、詐欺だと気づいた。 県警生活安全企画課は「警察が捜査や確認を理由に金銭を要求することはなく、SNSでやりとりすることもない。ビデオ通話で事情聴取したり、警察手帳や逮捕状を示したりすることもない」とし、「1人で判断せず、不審に感じたら家族や警察に相談してほしい」と呼びかけている。(坂田達郎)