化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の冤罪(えんざい)事件で、胃がんが見つかりながら保釈されずに亡くなった元顧問の相嶋静夫さん(享年72)の遺族が6日、国を相手取り約1億6800万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。冤罪にもかかわらず違法な身体拘束が続いたとし、逮捕状の発付や保釈を認めない判断に関わった計37人の裁判官の責任を問う。 訴状などによると、相嶋さんは2020年3月に外為法違反容疑で逮捕・起訴され、約7カ月後に胃がんが見つかった。20年11月に勾留が一時停止されて外部の病院に入院したものの、がんは末期の状態で21年2月に亡くなった。 弁護側は8回にわたり保釈請求したが、東京地検は「罪証隠滅の恐れがある」と反対し、東京地裁も追認し続けた。相嶋さんの死亡から約半年後、地検は公判維持が困難になったとして起訴を取り消した。 遺族側は、相嶋さんは警視庁公安部の約1年半にわたる任意捜査に協力しており、罪証隠滅や逃亡の恐れはなかった▽体調悪化後は生命の危険が著しく大きかったにもかかわらず、漫然と身体拘束を継続した――と主張。裁判官が証拠資料を総合的に勘案すれば、逮捕や勾留の要件に該当しないことは容易に認識できたのに、故意または重過失で見落とした違法があると主張している。 罪を認めなければ簡単に保釈されない問題は「人質司法」とも呼ばれる。ウェブサイト「CALL4(コールフォー)」では、裁判費用のクラウドファンディングを始めた。相嶋さんの長男(52)は「この国の司法を本来あるべき姿に取り戻すために、皆さまの力をお貸しください」と話している。【遠藤浩二】