■ 2012年の出来事 2012年(平成24年)12月の衆議院選挙でそれまでの民主党政権が倒れ、自公連立による第二次安倍内閣が発足した。安倍首相は就任後すぐに経済政策「アベノミクス」を打ち出すなどし、改革をアピール。2020年まで、日本で最も長い期間総理大臣を務めることとなる。 そのほかでは、ロンドン五輪にて女子レスリングの吉田沙保里選手、内村航平選手らが金メダルを獲得。iPS細胞(人工多能性幹細胞)の開発により京都大学の山中伸弥教授がノーベル医学生理学賞を受賞した。 2026年2月に30周年を迎えたINTERNET Watchは、1996年2月に有料メールマガジンとして創刊し、1997年1月にウェブサイトを開設した。ここでは2026年の視点から2012年の記事を10本取り上げ、当時を振り返る。 □1. 「遠隔操作ウイルス」で被害ユーザーが逮捕、「誤認逮捕」に世間が騒然 ▶“遠隔操作ウイルス”事件、専門家らは実行ファイルの扱いでギャップ痛感? この年、マルウェア感染で乗っ取ったPCが遠隔操作され、掲示板サービスに犯行予告が書き込まれる事件が複数件発生。警察はマルウェアの被害者である感染PCのユーザーを逮捕したが、遠隔操作されたユーザーは身に覚えがなく捜査は難航。「誤認逮捕」事件として世間で話題となり、遠隔操作の想定がない捜査機関への批判もあった。 上記は日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)による同事件に関する説明会のレポートで、同年10月時点で明らかになっている事件の概要が紹介され、検知の難しさや、遠隔操作された痕跡がないと無実の立証が難しいこと、個人ユーザーの危機感のなさなどが語られている。 後日、遠隔操作ウイルス対策として、通信内容などの記録を残すソフトウェアが公開されたりもした。 □2. DVDリッピングが違法化、違法ダウンロード刑罰化も「ねじ込まれ」る ▶10月1日からDVDリッピング違法化&違法DL刑罰化、改正著作権法が可決・成立 著作権法改正により、違法にアップロードされたものであることを知ってダウンロードする、いわゆる「ダウンロード違法化」が2010年に行われていたが、この年に、この違法ダウンロードに刑事罰が設けられることになった。この刑罰化は衆議院での可決時点で自公から提出された修正案によるもの。 当時の記事では、これまでにも権利者側から要請があったものの刑罰化の問題が指摘され、法案の段階では盛り込まれていなかったことを踏まえ、「政府案の修正というかたちで、いつの間にか同様の規定が著作権法にねじ込まれようとしている流れ」と述べている。 DVDリッピング(データの取り込み)違法化は、DVDビデオで使われる暗号化技術が、著作権法で回避することが違法とされる「技術的保護手段」に追加されたもの(こちらは国会提出の法案の段階で盛り込まれている)。これにより、私的使用を目的とした複製であっても違法となることになった。 □3. ペニオク詐欺事件発生、「ステマ」が問題に ▶サイバーエージェント、ペニオクを宣伝する芸能人ブログへの関与を否定 前年から問題になっていたペニオク(ペニーオークション)は、一般的なネットオークションと異なって入札するたびに手数料がかかり、落札価格は一般的なネットオークションよりも安くなりがちだが、参加者は手数料により高額の支払いを求められることが特徴。この年12月に、ペニオク事業者が詐欺容疑で逮捕された。 当時、ペニオク事業者は主な宣伝媒体として芸能人ブログを利用しており、複数の芸能人が、ブログなどで「ペニーオークションで欲しいものが安く落札できた」のような書き込みをしていた。これは典型的な「ステマ」(ステルスマーケティング。企業から金銭を受け取っての宣伝であることを開示せず、商品やサービスの紹介を行うこと)である。 上記記事は、当時の芸能人ブログ大手であるサイバーエージェント(Amebaブログ)が、会社としてのペニーオークション宣伝への関与を否定したことを報じたもの。この後同社では、Ameba著名人ブログのガイドラインを改定した。 この年、年初には「食べログ」で金銭を受け取って好意的なレビューを書くステマ問題が表面化し、5月にはステマ対応のため景品表示法のガイドラインが一部改定されるなどしていた。 3月には、ステマに関する意識調査で、一般ユーザーの約4割が「想像通りのことが明るみに出ただけ」と、ドライな回答だったとの記事もある。2023年10月から、ステマは景品表示法違反として違法化されている。 □4. 後のWi-Fi 5、「IEEE 802.11ac」対応Wi-Fiルーターが登場 ▶米Netgear、「業界初」802.11acルーターを5月発売、最大1.3Gbpsを実現 次世代無線LAN規格「IEEE 802.11ac」の標準化作業や導入に向けた動向がある中、この年4月に、Netgearから業界初をうたうIEEE 802.11ac対応ルーターが発表された。国内メーカーではバッファローが早いタイミングで製品を発表しているのを報じている。 IEEE 802.11acは2014年1月に正式規格として承認(標準化)。2018年に、Wi-Fi Allianceにより「Wi-Fi 5」と呼ばれるようになった。 □5. ソフトバンクがイー・アクセスを買収、モバイル基盤強化 ▶ソフトバンクがイー・アクセスを買収、LTEを強化、契約数はauを抜き業界2位に 10月、ソフトバンクがイー・アクセスを買収し、完全子会社化すると発表した。2000年という早い時期にブロードバンド(ADSL)サービスを開始した通信ベンチャー東京めたりっく通信、イー・アクセス、アッカ・ネットワークスが、全てソフトバンクに合流したことになる。 上記記事では、当時のイー・アクセス買収の大きな理由は、「イー・アクセスが展開する『1.7GHz帯のLTE』にある」としており、ソフトバンクでは当時提供していなかったiPhoneでのテザリングサービス提供開始について言及している。 □6. スマホの不正アプリが続々登場して問題に ▶バッテリー節約と称して連絡先を盗むAndroidアプリ、シマンテックが注意喚起 スマートフォンの普及が進む中で、さまざまな不正アプリが登場した。特にAndroidに多く、上記記事で取り上げているのは、バッテリー使用量を抑えると称して、インストールされたスマートフォンの連絡先情報を盗むアプリ。「ワンクリ詐欺」アプリと呼ばれたアプリは、当時「ワンクリック詐欺」と呼ばれていた架空請求詐欺(ウェブサイト上に表示される偽のボタンやリンクを1回クリックするだけで、架空請求画面に誘導され、アダルトサイト利用料などとして金銭の振込を要求される詐欺)のアプリ版。 Googleはこのような状況の対策として、アプリマーケットへのマルウェアスキャン機能導入を発表するなどしている。AppleのApp Storeでは件数は少ないものの、マルウェアが報告された事例がある。 □7. ソシャゲの「コンプガチャ」が違法に ▶消費者庁、「コンプガチャ」は景表法違反と正式見解、7月1日以降は行政処分も 主にスマートフォン/携帯電話向けに提供されるソーシャルゲーム。その多くで実装されている「ガチャ」でこの頃大きな問題になったのが「コンプガチャ」(コンプリートガチャ)。ガチャで複数種のアイテムやキャラを全部そろえる(コンプリートする)ことによりレアアイテムを入手できるシステムのことで、例えば、あるゲームのガチャにおいて、特定のキャラ5体をそろえることで進化した強力なキャラが手に入るとした場合、強力なキャラが欲しいプライヤーは対象となる5体のキャラを入手するため、特定の1体を入手するよりもかなり多くの「課金」が必要になる。 この年5月に、消費者庁が、コンプガチャは景品表示法に基づく告示で禁止されている「カード合わせ」に該当するとの見解を示したことを報じたのが上記記事。これに合わせて、各社がそろってコンプガチャ終了を発表した。 □8. Amazonの電子書籍リーダー「Kindle」が国内発売 ▶Amazon「Kindle」を日本でも11月発売、「Kindleストア」は10月25日オープン 米国では2007年に発売されていたAmazonの電子書籍リーダー「Kindle」が、この年11月に発売。10月末にはAmazon.co.jpに「Kindleストア」がオープンした。当初発売されたモデルは、「Kindle Paperwhite」「Kindle Fire HD(7インチモデル)」「Kindle Fire」の3種類。初期のストアのラインアップには、合計1万5000を超える漫画タイトルと、日本の名作などの無料の日本語書籍1万タイトル以上が含まれるとしている。 □9. Google、スマートグラスのプロトタイプを発表 ▶米Google、ARメガネ計画「Project Glass」のプロトタイプを発表 4月に、Googleは今でいうARグラス/スマートグラスのはしりと言える「Project Glass」のプロトタイプを発表した。AR技術に対応し、音声操作も可能だとしている。 同製品は「Google Glass」として開発者向けに提供されたほか、2014年に米国で販売されるなどしたが、2015年には一旦販売を終了した。 □10. iOS6のマップアプリに「パチンコガンダム駅」 ▶これもひとつの聖地巡礼?「パチンコガンダム駅」に実際に行ってみる人々(やじうまWatch) ほとんどのプロダクトがポジティブな話題になるAppleだが、この年に登場したiPhone用OS「iOS6」では、新しいマップ機能が変な方向で話題に。ベータ版では情報がスカスカだとして物議を醸し、正式公開後もスカスカぶりや、実在しない地名が表示されることが話題になった。上記のやじうまWatchの記事では、実在しない地名の中でも抜群のインパクトがあった「パチンコガンダム駅」に行ってみた人たちのエピソードを紹介している。 また、年末には、ジャーナリストの西田宗千佳氏と、地図のスペシャリストである河合太郎氏による、本件に関する特別対談記事も掲載している。