滋賀県東近江市の湖東記念病院で平成15年に患者が死亡し、殺人罪で服役後に再審無罪が確定した同院の元看護助手、西山美香さん(46)が国に損害賠償を求めた国家賠償請求訴訟の控訴審判決が25日、大阪高裁であった。長谷部幸弥裁判長は、滋賀県警の違法捜査を認定した一方、冤罪(えんざい)に対する検察の責任を認めなかった1審大津地裁判決を支持し、西山さん側の控訴を棄却した。 西山さんは滋賀県警の聴取に「呼吸器のチューブを外して患者を殺害した」と自白したことで逮捕・起訴。裁判で懲役12年が確定して服役した。 だが満期出所後の再審請求審などで、解剖医が自然死の可能性を除外できないと指摘した捜査報告書や、西山さんが殺害を否定した自供書などを、県警が検察側に送致していなかったことが判明。再審公判で検察側は有罪立証をせず、大津地裁は令和2年3月、自白の信用性や任意性を否定し、「事件性すら証明されていない」として無罪を言い渡した。 その後、西山さんは国と県に計約5500万円の損害賠償を求めて提訴。昨年7月の大津地裁判決は、軽度の知的障害などがある「供述弱者」だった西山さんに対し、県警の刑事が強く誘導し「虚偽供述を行わせた」と違法捜査を認定した。さらに証拠を送致しなかったことも違法とし、県に約3100万円の賠償を命令。県に対する判決は確定した。 一方で地裁判決は、担当検察官は県警の違法な捜査や対応に気づいておらず、当時の証拠状況からすると、起訴には「相応の合理性があった」と指摘。国への請求を棄却した。 西山さん側は国に約2300万円の賠償を求めて控訴。控訴審では、検察が県警の違法捜査を認識していなかったことはあり得ず、起訴や再審開始決定に対する不服申し立てなどについて「違法」だと主張していた。 ■湖東記念病院の患者死亡 滋賀県東近江市の湖東記念病院で平成15年5月22日、入院中の男性患者=当時(72)=が死亡。滋賀県警は16年7月、殺人容疑で看護助手の西山美香さんを逮捕した。西山さんは公判で無罪を主張したが懲役12年の判決が確定。しかし第2次再審請求審で大阪高裁は29年、新証拠の医師の鑑定書などを基に不整脈による自然死の可能性や虚偽の自白の疑いを指摘し、再審開始を決定、31年に最高裁で確定した。令和2年3月、大津地裁が再審無罪判決を言い渡し、その後、検察側が上訴権を放棄し確定した。