【社説】闇バイトの凶行 少年の心に刺さる警告を

バイトとは名ばかりで「闇バイト」は犯罪の強要に他ならない。捨て駒にされて人生を棒に振る代償の大きさを、分別が未熟な世代でも認識できるように、社会全体で伝えていかなければならない。 高額報酬をうたう求人に応募した少年による凶悪事件が相次ぐ。犯罪ごとに離合集散を繰り返す匿名・流動型犯罪グループ(匿流)が背後で操っているとみられる。 多くは交流サイト(SNS)や友人、先輩を介して凶行を強いられる。警察庁は危険性を周知するため、学校などでの啓発強化に乗り出した。 文部科学省をはじめ、インターネット空間の対策を担う総務省、求人広告に関わる厚生労働省など、政府一体で取り組んでもらいたい。家庭での注意喚起も欠かせない。 栃木県上三川(かみのかわ)町で5月に発生した強盗殺人事件では、実行役とされる16歳の男子高校生4人らが逮捕された。 最初に募集に応じた高校生が友人らを誘ったとされる。「やらなければ家族を殺す」と脅されたとの供述もある。匿流の典型的な手口だ。 特殊詐欺に代表される匿流の犯罪は、若者に実行役を担わせる事例が圧倒的に多い。強盗は低年齢化が著しく、昨年は匿流に関連して304人が摘発され、4割近くが20歳未満だった。 著書に「闇バイト-凶悪化する若者のリアル」がある福岡市出身の犯罪社会学者、広末登さんによると、指示役は「逮捕されても未成年だから少年院で済む」などと吹き込んで勧誘してくるという。 実際は、法定刑が死刑または無期拘禁刑の強盗殺人の場合、少年でも重い刑は免れない。しかも実行役の少年はほとんどが逮捕されている。 低リスクで手っ取り早くもうかるバイトはあり得ない。そうした現実を、少年たちの間に浸透させる必要がある。 警察庁などは先月、少年向けに「闇バイトで人生を棒に振らないために知っておくべき5つのこと」と題した広報資料を公表した。 「逮捕されるまでこき使われる」「先輩や友達からの誘いでも絶対にやってはいけない」と強く訴える。資料は出前授業などで活用する。 さらに学校以外にも情報を行き届かせるため、広末さんは「青少年に刺さる警告を発し続ける必要がある」として二つの提案をする。 一つは人気ユーチューバーによる動画配信だ。闇バイトの卑劣さを一刀両断にするメッセージを発してもらう。広告宣伝用の大型トラックによる注意喚起も提案する。警察庁が首都圏で実施しており、全国展開を検討すべきだ。 今まさに巻き込まれている人は、ためらわずに警察へ相談してほしい。警察はこれまでに約700件で保護しており、指示役側から襲われるようなケースは1件もない。 啓発と同時に主犯格らの摘発を一層強化し、匿流を壊滅させなければならない。

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