刑事裁判をやり直す再審制度見直しのための改正刑事訴訟法が17日、国会で成立した。その3日前、参院法務委員会で意見陳述を予定していた冤罪(えんざい)被害者の男性は、直前に出席を取りやめた。 前川彰司さん(61)。福井市で1986年に起きた女子中学生殺害事件で有罪となり服役し、昨年8月に再審で無罪が確定した。 参院委の前日、電話で知人らとやりとりする中で「改正法は17日に成立する見通しだ」と告げられた。 「法案を変えるつもりで訴えに行くのに、もうストーリーはできている。馬鹿にしている」 支援者らに「行かない」と告げ、参院に断りの電話を入れた。 逮捕されたのは21歳の時。60歳で得た再審無罪の決め手の一つとなった証拠を、検察は裁判に提出せず、34年間手元にとどめていた。 服役中に精神に変調を来し、医療刑務所に移った。再審の判決は、検察が適切に証拠を開示していれば「再審請求以前に(一審の)無罪が確定していた可能性も十分に考えられる」と指摘した。 5月に国会で審議入りした法案は、裁判所が検察に証拠提出を命じる制度を新設したが、その範囲は限定された。 「無実の人を救うことが法改正の趣旨なのに、これでは救われない」と憤る。国会に行かないことで「自分をあらわしたかった」という。(荻原千明)