インド東部で今月、11歳の少女が強姦・殺害されるという事件が発生し、同国で根深い性暴力に改めて注目を集まっている。今月だけで児童が被害者となって全国的な怒りを招いた強姦事件は3件を数え、抜本的な法改正にもかかわらず実際の進展がほとんどないことが浮き彫りになった。また遅々として進まない司法への苛立ちから、市民や警察が私的制裁を行うこともしばしばあり、問題を一層深刻なものにしている。 ◇ 今月4日の夕方、インド東部バルイプルに住む男性の11歳になる娘は、友人の誕生日パーティーに向かうため家を出た。 そして二度と帰ってこなかった。 地元警察官によると、少女は市場で複数の男に声を掛けられ、誘拐された上で強姦され、麻袋に詰められて池に投げ込まれたという。 「私たちが経験したような苦しみを、どの親にも味わってほしくない」と父親は語る。 インドでは残忍な性暴力が蔓延(まんえん)しており、国の犯罪統計によれば警察に届け出のあった強姦事件は1日あたり80件を超える。 活動家によると、被害者へのバッシングや中傷を恐れて届け出されない事件はさらに多いという。 ロイター ニューデリー支局 トラ・アガルワラ記者 「私たちが話を聞いた活動家らは、こうした犯罪の主な原因として、根深い女性蔑視と家父長制、全国の警察や司法機関にジェンダー意識を持つ人材が不足していることを挙げている。また、司法手続きが非常に遅いため、多くの加害者が処罰を逃れられると考えていることも背景にある」 2012年にデリーで発生した学生への集団強姦事件を契機に、有罪判決を受けた者への刑罰の厳格化や迅速処理裁判所(ファストトラック法廷)の設置など、大規模な法改正が行われた。 しかし、インドの惨状は続いている。過去1カ月だけでも、子供が被害に遭った少なくとも2件の別の事件が全国的な怒りを呼んだ。 12歳の少女が複数のホテルへ連れまわされて集団強姦された後、警察に保護された。警察によると、これまでに22人が逮捕された。 7歳の少女は強姦・殺害されたあげく、建設中のショッピングモールのシャフトに投げ込まれた。 地元住民はしばしば自らの手で「制裁」を加える。バルイプルでもその後、そうした事態が起きた。 アガルワラ記者 「地元住民は店舗を破壊し、道路を封鎖した。怒った群衆は男性1人をリンチで殺害したが、この人は後に無関係だったと判明した。主犯格の容疑者は警察に逮捕されたが、そのわずか数時間後、警察の勾留中に射殺された」 こうした「エンカウンター」と呼ばれる、警察が疑わしい状況下で容疑者を射殺する超法規的殺害への支持は、世論の怒りを背景に広がっている。 野党指導者や人権活動家は、こうした殺害に反対している。 アガルワラ記者 「彼らは、これらが司法手続きを回避し、司法制度を弱体化させると主張する。だが、遅々として進まない司法に嫌気が差した社会の多くは、こうした超法規的殺害を支持している」 ジェンダー権利活動家のサタブディ・ダス氏は、変化は社会から始まると述べ、「レイプ文化が人々の中に根付いていると考えているからだ」と語る。 今回の事件は、モディ首相率いるインド人民党(BJP)を苦しい立場に追い込んだ。BJPは、バルイプルのある西ベンガル州で数カ月前に初めて政権を獲得したばかりだ。女性の安全は、同党の主要な選挙公約の一つだった。 デリーに拠点を置く社会研究センターのランジャナ・クマリ所長は、制度的な改革が必要だと訴える。 「まず、適切に訓練された警察部隊が必要だし、適切な法医学研究所も必要だ。少女たちがどのような場面でも受けた性的な働きかけを通報できるよう訓練しなければならない。さらに政治システム、統治機構、政治家がもっと責任を持ち、この問題を政治利用するのではなく、女性に迅速に司法を届けられる仕組みや制度を作るべきだ。そうして初めてこの問題を抑制できる」