作家・吉田修一の短編小説を映画化した『逃げろお嬢さん』が、10月2日に全国公開されることが決定した。King Gnuの井口理が主演を務め、その“推し”である逃亡中の元アイドルを深川麻衣が演じる。あわせて、予告編とポスタービジュアルが解禁された。 原作は、『国宝』『横道世之介』などで知られる吉田の短編集『逃亡小説集』(角川文庫)に収められた同名小説。人生を支えてくれた“推し”を信じ抜き、守ろうとする一人のファンの、小さな奇跡の一日を描く。 親から仕事を継ぎ、つつましく温泉宿を営む康太。ある日、前を走る車の異変に気付き、心配して呼び止めると、運転していたのは高校時代から応援してきた元アイドル・鮎川舞子だった。 舞子の夫が薬物事件で逮捕され、舞子自身も疑惑を向けられたまま行方不明になっているというニュースを見たばかりだった康太。混乱しながらも、これまで自分の人生を照らしてくれた舞子のために、今できることを全うしようと決意する。 井口にとって、本作は『ひとりぼっちじゃない』(2023年)に続く2作目の主演映画となる。伊藤ちひろ監督の作品には今回で3度目の出演。推しを救うため、大きな勘違いを抱えたまま懸命に奔走する主人公を演じる。 本作の出演に際し井口は「吉田修一さん原作の世界観と監督の持つ世界観が合わさり、『逃げろお嬢さん』は美しさと滑稽さが両立した世界として描かれています」と説明。「昔好きだった人、自分の人生を救ってくれた人のことをどこまで信じ守れるかが、この作品の見どころになっていると思います。康太の孤軍奮闘を、皆さんに楽しんでいただければ幸いです」と呼びかけた。 一方、康太が長年応援してきた元アイドル・舞子を演じる深川は、「舞子とは、名前もたどってきた職種も近くて、だからこそ共感できる部分もたくさんあり、シンパシーを感じました」と役との共通点に言及した。 康太と舞子の関係については、「周りから見たら理解できない、滑稽なものに見えるかもしれません。でも2人の間にあった確かなものを見ていると、世論や常識を取っ払った、自分にとっての真実や本当に大切なものについて、考えるきっかけになりました」とコメント。さらに「自分をただただ真っすぐに信じてくれる人の存在がどれほどあたたかく、心強く、その存在にどれほど救われるのかを、身をもって実感できました」と振り返った。 伊藤監督は、『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)、『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』(2008年)などの脚本を手がけ、『ひとりぼっちじゃない』で映画監督デビュー。「『推し活』によって輝きを増す人が広がるなかで、私は『応援すること』の本質について考えるようになり、そんなとき吉田修一さんの短編小説に出会うことができました」と映画化の経緯を明かした。 さらに、「康太と舞子は、自分がもらった愛に応える。その愛は、励ましです。人から受け取ったエネルギーに励まされ、それが巡る。誰かのひとつの過ち、世間の枠からはみ出た者に対して、攻撃することよりも応援することのできる人がいる。真相を知ろうと弄って好奇心を満たすよりも本質を信じる気持ちを大切にできる人がいる。そういう人たちの心の美しさを映画に残したいと思いました」と作品に込めた思いを語っている。 原作者の吉田は「誰かをずっと応援してきた人に訪れる小さな奇跡の物語。この小さな奇跡を伊藤ちひろ監督がきらきらと輝かせてくれた」と映画を称賛。「井口理さんと深川麻衣さんの声や体からあふれてくる深い人間愛のようでもあり、気がつけば2人が体験する小さな奇跡を心から応援していました」とコメントを寄せている。 解禁された予告編は、舞子がラジオ番組で一通のはがきを読み上げる声とともに、温泉宿を営む康太の日常から始まる。行方不明と報じられた舞子と偶然出会った康太は、「私のことご存じですか」と尋ねられると、正体を知りながら「いえ、知りません!」と即答。 「私は取り返しのつかないことに手を出したと思う」と、誰かに電話で話す舞子をそっと見守る康太。さまざまな康太の奮闘にのせて「俺は、あなたの存在に何度も励まされ、支えられてきました。会って直接話をしたことがなくても、あなたはいつまでも大切な存在なんです」と、康太の想いが語られ、「俺、助けます」という康太の決意の言葉で締めくくられる。 ポスタービジュアルには、必死に走る康太や空を見上げる舞子、向かい合う2人などを収め、「人生を支えてくれた推しに 今、僕ができること――」とのコピーが添えられている。