日本の調査捕鯨船の妨害活動に関与したとして、海上保安庁が国際手配した反捕鯨団体「シー・シェパード」創設者、ポール・ワトソン容疑者(74)について、国際刑事警察機構(ICPO)が早ければ6月にも手配の適否を最終判断する。「逮捕は日本の政治的動機に基づく」との容疑者側の主張が認められれば、国際手配が消滅する可能性も出てきた。 「海上保安庁としては国際手配の継続は必要であり、引き続き関係省庁と連携して適切に対応する」。海保の瀬口良夫長官は16日の定例記者会見で、こう言及した。 シー・シェパードは今月8日、ICPOからワトソン容疑者の手配を一時停止するとの通知を受け取ったことを明らかにした。同容疑者には身柄の拘束を各国の警察機関に求める「赤手配」が適用されていたが、日本国内で発布された逮捕状に政治的な動機に基づく疑義が生じたとして、ICPOのシステム上で一時停止されたことを確認したという。 ワトソン容疑者側が「政治的動機」を強く主張するのには理由がある。現在、196の国と地域が加盟しフランスに本部を置くICPOは、加盟国からの要請を受けて、国外逃亡した容疑者の所在特定や身柄拘束を求める国際手配を行うほか、指紋やDNAなどの情報をデータベース化して提供している。 ただ、実際に捜査を行う権限はない。各国から出される国際手配の要請について、ICPO憲章で定めた「政治的、軍事的、宗教的または人種的性格を持ついかなる干渉、活動をしてはならない」との理念に基づき、正当な根拠があるか、政治目的でないか点検するのが役割だ。 ワトソン容疑者のケースでは、日本側の逮捕状が「政治犯」の拘束を求める目的と認められれば、憲章の理念に反するとして、赤手配書がICPOのシステム上から削除される可能性がある。シー・シェパードによると、6月に開かれるICPOの会合後にワトソン容疑者の手配が妥当かどうか、最終決定するとの通知を受けたとしている。 ■日本の逮捕状「効力」は継続