「会えば必ず挨拶してくれました。あんなに明るく感じの良い子が……。信じられません」 犯行現場近くに住む女性は、こう亡くなった少女を悼んだ。 痛ましい事件が起きたのは4月14日の夜8時過ぎだった。場所はJR埼京線・南与野駅から西へ2㎞ほど離れた、さいたま市内にある住宅街のマンション。そこに住む高校1年生の手柄玲奈さん(15)が、敷地内で上半身を刃物により何ヵ所も刺され死亡したのだ。 「すぐに手柄さんの兄から『家族が刃物で刺された』と110番通報が入ったそうです。警察官がマンションへ駆けつけると、入り口付近で大量の血を流し倒れている手柄さんを発見。病院に搬送されましが死亡が確認されました。 加害者と思われる男の身柄が確保されたのは、事件発生から20分ほど経った頃です。男は犯行現場から約1.2㎞離れた交番に現れます。しかし交番が無人だったため、近くにいた通行人に110番通報を依頼。駆けつけた警察官に確保されたんです」(全国紙社会部記者) ◆育ててくれた母親も亡くなり…… 男は両手に切り傷を負っていたため病院で治療。回復を待って埼玉県警捜査1課が4月15日に殺人の疑いで逮捕したのが、住所・職業不詳の谷内寛幸容疑者(24)だ。 「谷内容疑者は、昨年10月から現場近くの建設会社に住み込みで働いていました。事件当日は早朝から仕事をし、午後2時ごろには会社に併設される寮に戻っていたとか。夕食をすまし、外出したのは夕方6時半過ぎです。 ただ、手柄さんと谷内容疑者には接点が見つかっていません。押収した谷内容疑者のスマートフォンからも、手柄さんとの関係を裏づける履歴は発見されなかったとか。会社の寮を出て1時間半ほど周囲を徘徊し、たまたま面識のない女子高生が自宅マンションへ帰ってきたところを見かけ犯行に及んだ可能性があるんです」(同前) 捜査が進むにつれ、谷内容疑者の素顔も少しずつ明らかになってきた。 「以前、谷内容疑者は都内に住んでいたようですが両親が離婚。何年か前には、育ててくれた母親も亡くなったそうです。酒は飲みますが、あまり社交的ではなく本を読んでいることが多かったとか。愛読していたのは三島由紀夫や夏目漱石で、本棚に彼らの著書が並んでいたと聞いています。 警察が寮の部屋を家宅捜索すると、新品と思われる包丁など刃物2本が見つかりました。部屋には台所がなく、寮内には共同の食堂があります。包丁は料理に使われた形跡がないことから、犯行は事前に計画されていたという見方が浮上しているんです」(別の社会部記者) ◆「身勝手極まりない犯行」 警察に対し雑談には応じても、事件に関しては黙秘を続けているという谷内容疑者。本誌カメラマンが4月15日に、逮捕直後の谷内容疑者を撮影すると沈黙し考えにふけるような素顔をみせていた。 元神奈川県警刑事で、犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は意外な見立てで事件を読み解く。 「容疑者と亡くなった女子高生に、まったく面識がなかったかは疑わしいところです。通常、通り魔犯罪はターゲットが多いため人通りの多い駅前などで起きます。しかし今回の犯行は住宅街のマンションです。しかも時間は夜8時過ぎで人通りも少なかったでしょう。 容疑者は現場近くに住んでいたため、被害女子高生を見かけたことがあるのかもしれません。明るく感じの良い言動に接し、自分の恵まれた部分の少ない人生と照らし合わせコンプレックスを膨らませていた可能性がある。もしそうだとしたら、身勝手極まりない犯行といえるでしょう」 事件現場には、亡くなった手柄さんを偲び同級生や近隣住民などからの献花や供え物が絶えない。