大統領選、結果をねじ曲げる…シャンパンで官邸はお祭り騒ぎ 現職に忠告「流血、避けろ」 国際舞台駆けた外交官 岡村善文氏(45)

公に目にする記者会見の裏で、ときに一歩も譲れぬ駆け引きが繰り広げられる外交の世界。その舞台裏が語られる機会は少ない。戦後最年少(50歳)で大使に就任し、欧州・アフリカ大陸に知己が多い岡村善文・元経済協力開発機構(OECD)代表部大使に、40年以上に及ぶ外交官生活を振り返ってもらった ■憲法院長、実は大統領の側近 《大使として赴任していたコートジボワールで2010年秋、大統領選の決選投票が行われた。現職のバグボ大統領と、元首相のワタラ候補との戦いとなった》 決選投票は各国大使や国連など、国際社会の厳正な監視のもと、実施されました。投票率は異例の8割超にもなった。 しかし、大変なことが起こったのです。 投票数日後、選管委員長がワタラ候補の当選を発表したにもかかわらず、憲法院の院長が「その宣言は間違いだ」と言明した。「憲法院が結果を発表する」とも述べたのです。 コートジボワールでは、憲法院が選挙結果に関し最終的な判断を下す、と憲法で規定されています。ところが、憲法院長は実は、絶大な権力を持つバグボ大統領の側近。勝利者はワタラ候補ではなく、バグボ氏だ、と宣言する恐れがありました。 ■天皇誕生日の祝賀会、中止に 《実はこの日(12月3日)の夜、日本大使公邸で、天皇誕生日の祝賀会が予定されていた》 私は「祝賀会は、選挙が首尾よく実施できたことを祝う会にもなる」と考えていた。ところが、開票発表が混乱し始め、突如、夜間外出禁止令が発出されました。私はやむなく、祝賀会中止を決定せざるを得ませんでした。 私は、この成り行きに憤慨した。しかし、タダで転ぶ気はない。私は「祝賀会の中止を伝えに行く」との名目で、バグボ大統領に面会を申し入れました。 ■官邸に「午後4時に来い」 《バグボ大統領は、この面倒な時期に面会などしないと思っていた》 すると、大統領官邸から「午後4時に来い」とのこと。日本大使公邸を出る直前、テレビ画面を見ると、すでに憲法院長が登場していた。 私は大統領官邸に到着。待合室で面会を待っていると、テレビの大音量が聞こえてきました。

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