大阪市西成区の市立千本小学校沿いの路上で小学生7人が車にはねられて重軽傷を負った事件で、負傷者の1人で小学3年の男児(8)と父親(48)が、産経新聞の取材に応じた。男児はけがの程度こそ軽かったものの、事件後に車を怖がり、夜中に突然飛び起きるようになった。「軽傷」では表しきれない深い傷が心に残っている。 ■吹き飛ばされる体 事件は1日午後1時35分ごろ発生。この日は午後の授業はなく、給食を終えて約300人の児童が一斉に下校を始めたばかりだった。 男児が正門を出て、前を歩く同級生らのグループを見つけて近付こうとした瞬間―。 「車来てるで」。叫び声が聞こえ、振り返ると大型のスポーツ用多目的車(SUV)が迫ってきた。避けようとしたが、強い衝撃とともに体が前に吹き飛ばされた。 男児は被害者7人の中で最後尾にいたとみられる。体を起こすと、友人が次々とはねられるのを目の当たりにし、中には車の下敷きになる児童もいた。周囲に泣き声が響く。「先生を呼びに行かないと」。自身も両ひじと両ひざをすりむいたが、それにかまわず、職員室へ走った。 捜査関係者によると、SUVは直線道路を蛇行しながら進み、減速することなく小学生の列に突っ込んだとみられる。 男児は病院へ搬送されたが、その日のうちに帰宅できた。車にはねられた衝撃で、お気に入りだったランドセルと水筒はへこんだり傷が残ったりした。「大事な水筒で、まだ2回しか使っていないのに…」と悲しげな表情を見せる。 ■夜中に飛び起き… 被害はこれだけでは終わらない。父親によると、事件後にカウンセリングを受けたものの、SUVと似た車を見かけると、「犯人の車」とその場で伏せてしまうようになった。夜中に突然、「うわっ」と叫びながら飛び起きることも。父親が「どうしたの」と声を掛けると、「怖い」と口にしたという。 殺人未遂容疑で逮捕された無職、矢沢勇希容疑者(28)=東京都東村山市=は逮捕後の調べに「全てが嫌になり、数人の小学生をひき殺そうとした」と供述したほか、「苦労せずに生きている人が嫌だった」という趣旨の話もしている。 父親は「容疑者の人生にも辛いことがあったのだろうが、子供を巻き込むのは卑劣で許せない」と憤る。