言語を奪われ、社会が崩壊する…150人以上が「焼身自殺」、中国支配のチベットの実態

昨年12月、中国のアムド地方(青海省)のゴロク・チベット族自治州タルラク県で村長のゴンポ・ナムギャルが死亡した。刑務所から釈放されて3日後のことだった。伝統的な葬儀の準備中に、遺体に残酷な拷問を受けた痕が見つかっている。 ゴンポ・ナムギャルはチベット語の保護運動に参加して逮捕された。彼は中国が20世紀半ばにチベットに侵略して以来、75年近くじわじわと進められてきた同化政策の犠牲者だ。 チベット人はチベット語の維持に努め、標準中国語の強制に抵抗してきた。しかし今では、子供たちはほぼ中国語のみで教育を受ける国営の寄宿学校で学び、自分たちの言語を失いつつある。チベット語の授業は週に数回だけで、言語を維持するには不十分だ。 私はチベットでもほとんど注目されていない、チベット語以外の少数言語の苦境について研究している。チベットの言語をめぐる政治状況は驚くほど複雑で、中国当局からだけでなくチベット人同士の間でも、肉体的なものも含めたさまざまな暴力が続いている。 私は2005~13年にチベット高原最大の都市ジリン(チベット語名、中国名は青海省省都の西寧)で暮らし、大学で教鞭を執り、地元の非政府組織を支援した。その後の研究の中心は、チベット高原東北部のレブゴン(中国名・同仁)渓谷の言語をめぐる政治だ。 08年の北京オリンピックの開幕直前に、チベット人は中国の支配に対して大規模な抗議運動を始めた。弾圧の主な対象は言語と宗教で、人々の抗議は大量の逮捕、監視の強化、チベットのアイデンティティーの表現や移動の自由に対する制限などを引き起こした。 混乱は何年も続き、09年以降、150人を超えるチベット人が抗議の焼身自殺をしている。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする