警視庁公安部は、大川原化工機を巡る訴訟の一審判決以降、捜査指導体制や人材育成策を拡充させるなど、再発防止に向けた取り組みを進めている。 2023年12月の一審判決で捜査の違法性を認定された公安部は昨年、公安総務課に理事官級の捜査指導官ポストを新設した。指導官の下に約20人の専従チームも立ち上げ、公安・外事捜査の指導に当たるとともに、担当部署が収集した証拠を第三者の目で吟味する体制を整えた。 一連の訴訟では、捜査員同士のコミュニケーション不足を指摘する声が現場から上がった。公安部幹部によると、捜査拠点が分室や署など警視庁本部以外にある場合、上司の目が届きにくく、「たこつぼ化」しやすい状況があった。これを改善するため、チームは各拠点を定期巡回して捜査員と意見交換したり、捜査の進展や人間関係の把握に努めたりしている。 情報収集や内偵捜査が多い公安部は、容疑者を取り調べたり、逮捕したりする経験が刑事部などと比べ少ないとされ、「場数」も課題だった。取り調べや検察との折衝といった捜査実務の経験を積んでもらうため、先月から中堅・若手の捜査員6人を、殺人事件を担当する捜査1課や経済事件を担当する生活経済課などへ派遣している。 若手育成策の一環として1月から、署の公安担当の捜査員を本部の事件捜査に従事させる取り組みも始めた。公安部幹部は「多種多様な事件を経験してもらい、ノウハウを積んでほしい」と話している。