副検事はなぜ「漏洩」したのか 元検事正性的暴行事件から浮かんだ組織のゆがみ

大阪地検の元検事正が部下の女性検事への性的暴行の罪に問われている事件。法をつかさどる検察の大幹部が起こした前代未聞の不祥事といえるが、事件を巡っては、同僚だった女性副検事が性的暴行に関する捜査情報を加害者である元検事正側に漏らしていたことも発覚した。背景には、閉鎖的な人間関係や退官後も古巣とのつながりが深い副検事という職種の特殊性といった、検察組織が抱える構造的な問題も透けてみえる。 ■参考人聴取の内容を… 元検事正は平成30年9月、自身の就任祝いのため開かれた懇親会後、酒に酔って抵抗できない状態の女性検事に官舎で性的暴行をしたとされる。 昨年6月に準強制性交容疑で大阪高検に逮捕、起訴され、同10月の初公判で起訴内容を認めたものの、その後に「合意があった」として無罪主張に転じている。 副検事は、事件直前の懇親会に参加していた。被害者の女性検事は、この副検事が捜査情報を漏洩(ろうえい)したほか、副検事から誹謗(ひぼう)中傷を受けたとして、国家公務員法違反や名誉毀損(きそん)などの罪で高検に刑事告訴した。 副検事は、事件の参考人として検察側の聴取を受けた際、聴取内容を口外しないよう要請されていたのに元検事正側に聴取された事実などを伝達。また、被害者を詮索しないよう注意喚起されていたのに、組織内の複数人に被害者の名前を明かしていたという。 ■「たたき上げ」多く ただ、高検は今年3月、副検事を戒告の懲戒処分とする一方、刑事告訴については不起訴処分とした。 ある法務・検察OBは「情報漏洩は懲戒処分に当たるとしつつ、(刑法が定める)名誉毀損には当たらないと判断した上での不起訴のようだ」としつつ、「罰するべき違法性の有無とは別に、一般論として組織内での副検事の立ち位置でいえば、元検察幹部に迎合する部分があった可能性もある」と打ち明ける。 副検事は、司法試験の合格が必須の検事とは異なり、10年以上の経験を積んだ検察事務官や裁判所書記官、家庭裁判所調査官のほか、20年程度の経験を重ねた警察官や麻薬取締官などの公務員に選考試験の受験資格が与えられる。 公務員以外でも、政令で定める大学で3年以上、法律学の教授か准教授をしていれば受験できるが実際は、多くが検察事務官出身の〝たたき上げ〟だ。

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