世はビッグデータの時代である。犯罪対策においても、ビッグデータに基づく最先端テクノロジーの利用が加速している。その関係で、数学的手法や統計的手法も事件解決や犯罪予防に使われるようになった。その模様は、米国テレビドラマ『ナンバーズ―天才数学者の事件ファイル』でも細かく描かれている。【小宮信夫(立正大学教授[犯罪学]/社会学博士)】 例えば、「データマイニング」(data mining)も、注目を集めている一手法だ。 データマイニングとは、膨大な情報の中から有益な法則を探し出すことである。マイニングは採掘を意味するので、巨大なデータの山をコンピュータで掘り進み、思わぬ金脈を掘り当てるというニュアンスがある。 これがトレンドになっているのは、情報の保存と流通コストが一気に下がったからだ。その結果、情報爆発が起き、ビッグデータと呼ばれる多種大量でスピーディーな情報が得られるようになった。ビッグデータを使えば分析の範囲と深度が飛躍的に増す。データマイニングの特徴はまさにこのことだ。 従来の統計分析は、想定した法則が本当かどうかを、収集可能な情報を使ってチェックするというものだった。自分が過去に気づいたことの裏付けをすることなので、これは回顧型・確認型の分析手法だ。しかし、入手可能な情報の量と質が向上したデータマイニングでは、これまで気づかなかったことが浮かび上がってくる。つまり未来型・発見型である。 『ナンバーズ』でも、データマイニングによって、①無関係に見えた住居侵入強盗と自動車強盗が同一グループによる犯行だったことを見つけるストーリー、②被害者によって契約していた保険会社はまちまちだが、データマイニングの過程でそれらの再保険会社(他の保険会社の保険責任を引き受けることを業務とする保険会社)が同一であることに気づくストーリー、③テキストマイニングでインターネットのチャットルームの会話ログを分析するストーリーなどが展開されている。 このように、データマイニングは犯罪予測の新たな地平を切り開いた。