機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)への捜査は違法だったとして、東京都(警視庁)と国(東京地検)に計約1億6600万円の賠償を命じた東京高裁判決について、都と国は11日、原告側に対して上告しないと伝えた。原告側の代理人弁護士が明らかにした。 この日が上告期限だった。一審に続いて、逮捕・起訴の違法性を認定した高裁判決が確定する。 大川原化工機の社長ら3人は2020年、軍事転用可能な噴霧乾燥機を許可なく輸出したとして、外国為替及び外国貿易法違反の疑いで逮捕・起訴されたが、地検は初公判直前の21年に起訴を取り消した。社長らは、逮捕前から繰り返し「輸出規制の要件にあたらず許可は不要だ」と説明していた。 5月28日の高裁判決は、捜査を担った警視庁公安部が、社長らの説明を踏まえて機器の追加実験をしていれば、不正輸出に当たらないと判断できたと認定。輸出規制をめぐって公安部が採用した独自解釈も「相当ではなかった」と判断し、逮捕に「合理的な根拠を欠いていた」と認めた。 公安部が取り調べ時に、公安部の見立てに沿った内容に調書を書き換え、そのことを説明しないまま署名させた点なども違法だとした。 地検についても、「規制要件にあたらない」という社長らの説明は地検にも報告されていたのに、必要な実験を怠ったと指摘。起訴にも合理的な根拠がなく、違法だと結論づけていた。 高裁判決を受け、社長らは9日、警視庁や東京地検などに上告断念を求める要望書と署名を提出した。署名は高裁判決後から8日正午までの間に、オンラインで4万1千筆以上集まったという。(黒田早織)