筆者は、ある女子大学生が薬物に嵌まり、そのダメージから回復するまでのプロセスをひとつの“啓発事例”として著書『スマホで薬物を買う子どもたち』(新潮新書/2022年刊行)で紹介したことがある。 この春、彼女が亡くなった。死因は薬物の過剰摂取による自殺だ。後述するように彼女は様々な問題を抱えていた。だが、悲劇のはじまりは“彼女の大学時代の薬物使用”、ここが出発点だったと考えている。薬物は人を傷つけ、人生を狂わせる場合もある。実に悲しい話になるが、本稿では彼女の物語を紹介したい。【瀬戸晴海/元厚生労働省麻薬取締部部長】