【日大重量挙げ部不正徴収】誰も逆らえない「絶対的カリスマ」に周囲が感じていたあの〝ドン〟の影

6月10日、警視庁捜査2課は日本大学重量挙げ部の元監督で生物資源科学部元教授の難波謙二容疑者(63)を詐欺の疑いで逮捕した。 「難波容疑者は’22年12月上旬ごろ、翌年春に入部予定だったスポーツ奨学生の保護者4人に『奨学生として申請するので2年次以降は免除されます』と書かれた偽の請求書を送付。本来であれば1年次から免除されるはずの授業料、入学金を振り込ませるという手口で205万円を騙し取ったとされます。 ’15年度以降の約10年間で、少なくとも48人から約3795万円を同じ手口で不正に徴収していたと警察は見ています。難波容疑者は『寄付金として保護者の了解を取り付けて貰ったおカネという認識。私的に使用した寄付金は一切ない』と容疑を否認しています」(社会部記者) この不正は昨年7月に日大が公表。難波容疑者は学部の教授を懲戒解雇、重量挙げ部の監督も解任されていた。日大の調査では被害額はもっと大きく、’05年度以降に少なくとも58人から計5300万円を不正徴収していたという。 同大学は難波容疑者を刑事告発。さらに、返金にかかった費用などを含めた約7300万円の返済を求めて提訴している。 ◆禁止されたはずの「代理受領」が行われていた なぜ、難波容疑者は入学金や授業料を多くの学生の親から徴収することができたのか。そこには日大ならではのシステムがあった。 「日大の一部の運動部では、授業料など大学へ支払う費用を部の口座に納める『代理受領』が行われていました。部のほうでまとめて大学に振り込むわけです。’14年に『代理受領』は禁止されているのですが、その後も続けていた部が複数あったことが明らかになりました。 不正徴収は陸上部、スケート部でも行われており、そのカネの一部が他の学生の授業料や施設設備資金に充てられたことが発覚。“有力な選手を獲得するために使われたのではないか”と言われています」(大学関係者) ただ、重量挙げ部のケースでは、難波容疑者が多くを私的に流用していたと警察は見ている。不正徴収に協力したコーチらが受け取った形跡はないという。 「部の口座に集められたお金から毎年、300万~800万円を部の会計責任者やコーチらが引き出し、難波容疑者に渡していました。昨年6月に大学側が難波容疑者の研究室を調べたときに、銀行の帯封がついた100万円の札束11本が見つかっています。 難波容疑者は警察の聴取には私的流用を否定していますが、大学側の聞き取りに対しては『家族との飲食や愛車のメンテナンス、高級酒の購入などに使った』と説明しています。高級時計を何本も持ち、高級外車を乗り回す難波容疑者の金回りの良さは周囲でも噂になっていたようです」(前出・社会部記者) ◆〝ドン〟そのものだった 自身も日大重量挙げ部の出身である難波容疑者は、1988年に同部のコーチに就任。毎日練習場に顔を出し、熱心に指導していたという。選手の育成にも定評があり、部を強豪に育て上げたのは難波容疑者の功績だといわれている。 大学対抗選手権の団体で何度も優勝を誇り、五輪代表を輩出するほどにもなったが、’00年に監督となってからは練習に姿を見せる機会は激減したという。不正徴収は監督就任後まもない時期に始まったとされる。 「20年以上も部を率いて、見事強豪に育て上げた難波さんは絶対的カリスマとして君臨。コーチ陣は狛江市にある難波さんの自宅まで車で送り迎えをさせられていました。請求書の偽造や保護者とのカネのやり取りはコーチ陣がやらされていたそうです。不正徴収をやめるよう諫めたコーチもいましたが、とりあってもらえなかったようですね。 今回の件で、かつて〝日大のドン〟と呼ばれた田中英寿前理事長の〝影〟を感じた関係者も少なくありません。田中前理事長は自分と同じように競技部の監督から教授に上りつめた難波さんを評価していて、距離も近かった。大きな権力を手にした点も重なります」(前出・大学関係者) 日大は難波容疑者の逮捕に際し、次のようにコメントをしている。 「このような不正行為で社会的信頼を失墜させたことは痛恨の極み。社会に対し深くお詫びをするとともに、厳正に責任追及を行い、捜査機関に全面的に協力する」 ’18年に起きたアメフト部の悪質タックル問題や、’21年の田中前理事長の逮捕などを受けて’22年に体制を一新した日大。しかし、’23年のアメフト部の大麻問題に続いてまたしても不祥事が起きてしまった。〝過去の膿〟をすべて出し切るのはいつになるのだろうか……。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする