「携帯電話を設計してくれないかい?」 欧州で仕事をしていた1人のイスラエル通信会社役員は昨年、イスラエル・テルアビブにいる古い友人から電話がかかってきた。携帯電話を製作しようという用件だったが、条件が付いていた。暗号化された情報を送出することができ、この情報はソーシャルメディア(SNS)のデータとして偽装できなければならず、安価なアンドロイドスマートフォンのように見せなければならない--ということだった。 ほぼ同じ時期、イスラエルのある医療スタートアップ企業は「第9900部隊」から連絡をもらった。第9900部隊はドローン(無人機)や人工衛星から確保した写真を分析して軍事情報を判読する部隊だ。一般の人たちは気づきにくい要素を識別できる天才自閉症兵士たちが勤務しているところとしても有名だ。この部隊は同社に「ガソリンを積載した貨物車とミサイル燃料を積載するトラックを区別できる衛星写真分析システムを作れるか」と問い合わせたという。 19日(現地時間)、フィナンシャル・タイムズ(FT)はイラン軍指揮部、核科学者、防空網をほぼ同時に除去したイスラエルの「ライジング・ライオン(立ち上がる獅子)」作戦の成功要因となった諜報戦エピソードをこのように伝えた。あわせて「商業衛星、携帯電話ハッキング、現地で募集した秘密要員、ドローン組立秘密倉庫、日常車両に装着できる小型武器などすべての資産を活用して数年間にわたり実行された作戦」と説明した。 元イスラエル当局者は「数百万ドルと数年間の努力を注ぎ込んだ」とし「諜報と公開情報、資金など、持てるすべての資産を投じて得た結果」とFTに話した。 イスラエル軍情報機関はイランの火力が集中した場所や核プログラムなどを把握して3月「目標物バンク」を構成し始めたという。イスラエルは昨年9月レバノン武装組織ヒズボラの指導者ハッサン・ナスララを空襲で除去する時も自動化されたシステムを通じて一日に一度、ナスララの位置を正確に把握する水準の追跡システムを準備したという。 イスラエルの空襲以降、イランは大騒ぎとなった。「屋根の上にマイクロドローンが飛んでいないか確認せよ」(元革命防衛隊幹部)、「イラン反政府勢力が金を受け取ってイスラエルのドローンを密搬入した」(イラン警察庁長)、「携帯電話が暗殺にも使われている」(イランメディア)などの警告を繰り返し発信した。 一部の強硬派政治家は「軍幹部、高位当局者、核科学者、そしてこれらの家族もすべての携帯電話をなくすべきだ」とも言った。 しかしFTはイスラエルの作戦に精通した消息筋を引用して「今の時点でそのような措置は大した意味はない」とした。暗号化された情報送出が可能な携帯電話の設計要求を受けたイスラエル通信会社の役員は自身のソフトウェアがイランで使われたかどうかについては言及を拒否しながらも「世界的に数百人が同時に使うことが時々ある」とメディアに語った。 イランは内部のスパイ探しに集中しているが、成功と見るには曖昧な部分がある。この日、イラン半官営タスニム通信によると、イラン防諜当局は首都テヘランで活動していたイスラエルスパイ24人を逮捕したと明らかにした。ところがスパイ容疑で捕まったイスラエル人はいない。イラン内部で現地の人々が広範囲にイスラエルに協力しているという傍証と解釈される部分だ。 イラン当局はイスラエル情報機関モサドのスパイを探し出すとし「マスク・ゴーグルをした見慣れない人々、ピックアップトラックを運転して大きいカバンを持った人々、宅配荷物を頻繁に受け取る人々、昼間もカーテンを引きっぱなしの家(に注目しなさい)」と注文するが、特に効果がないという意味でもある。 イスラエル総理室で勤務経験のあるケンブリッジ中東・北アフリカフォーラムのシニアフェロー、カディ・イシャヤフ氏は「一方がこのように徹底して相手の計画と指揮部の動向を把握した事例を知らない」とし「エジソンの言葉のように、今回の作戦は1パーセントのひらめきと99パーセントの汗の結晶体」と話した。