「バーに行きたい」 マッチングアプリで出会った男性をぼったくりバーに誘い込み、待ち構えた他のメンバーとともに脅迫。翌朝まで監禁し、多額の金品を支払わせていた──。 警視庁は6月19日までに、詐欺などの疑いで、ぼったくりグループとみられる6人を逮捕。その中には、リーダー格でバーの従業員、鈴木駿太容疑者(22)、葛西寛人容疑者(24)ら5人の男とともに、ただ一人の女性、熊谷ひより容疑者(23)もいた。彼らの犯罪は、巧妙にマニュアル化されていた。その中身とは……。 今年の3月と4月、熊谷容疑者はマッチングアプリを通じて知り合った20代の2人の男性を、冒頭の言葉で自分たちのぼったくりバーに誘い込み、鈴木容疑者ら男性メンバーが飲食代として45万円を請求。22万円を支払わせたという。ただ、これだけでは終わらなかった。 「葛西容疑者が因縁をつけて、2人を翌朝までサウナで監禁したのです。その後、鈴木容疑者が、2人の対応のために予約客のキャンセルが出たと言い、店への損害賠償という名目で、被害者に複数の消費者金融とローン契約をさせ、現金200万円を搾取。さらに、金のネックレス6本などを購入させた疑いが持たれています。彼らは、このような犯罪のためのマニュアルを作り、ターゲットとなる男性の特徴なども決めていました」(全国紙社会部記者) そのマニュアルには、〈なめられない20代男性〉〈都心より遠方に住んでいる人〉〈やぼったくて女性経験が少なく怒らなさそうな人〉〈酒が強くよく飲む人はNG〉など特徴が書かれており、熊谷容疑者がマッチングアプリを通じて物色したものと思われる。 警視庁の調べに対し、グループのリーダーだった鈴木容疑者は「自分たちがやったことに間違いない」と容疑を認めているという。元神奈川県警刑事で、犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が解説する。 「これも、特殊詐欺グループの新しい犯罪の形態の一つでしょう。ぼったくりバーは昭和の時代からある“詐欺”の手法ですが、最近は、街で声をかけても客が引っかからなくなりました。そこで、マッチングアプリを利用して、マニュアルどおりのターゲットを探し、店に誘導するという手法が増えてきたのです。熊谷容疑者は23歳と若く、見た目も普通の女性です。もしかしたら、いわゆるホワイト案件ということで、マッチングアプリを利用したアルバイトに募集したところ、犯罪に巻き込まれてそのままグループから抜け出せなくなったのかもしれませんね。 グループリーダーが22歳と非常に若いことから、そのバックには巨大な特殊詐欺グループの存在をうかがわせます。特殊詐欺グループはこのように、常に少しずつ形態を変えて犯罪を続けていきますから、犯罪が起こる前に摘発するのも難しくなっている現状です」 若者たちが出会いの場としてマッチングアプリを使うのは今や常識だが、そんな場所にも特殊詐欺グループの魔の手は広がっている。