全国の風俗店に女性を違法に紹介したとされる巨大スカウトグループをめぐり、警視庁・保安課が解体を目指して捜査を続けています。オウム真理教事件以来、30年ぶりに設置された特別捜査本部の捜査の最前線に密着取材しました。 今年2月、都内の警察署で行われた捜査会議。警視庁の生活安全部保安課は、オウム事件以来、30年ぶりに特別捜査本部を設置し、あるグループを追っていました。 捜査員 「既に押収している証拠資料から、ほぼ全容は掴めている」 ターゲットは巨大スカウトグループ「アクセス」。300人のスカウトが所属し、全国の風俗店に女性を違法に紹介しているとされています。 このトップとみられるのが、去年11月に逮捕された遠藤和真容疑者(34)です。 そもそも、性風俗店に女性を紹介するスカウト行為は法律で禁止されています。しかし、「アクセス」はSNS上で女性を勧誘し、リスト化。女性の自撮り写真やプロフィールなどのデータを性風俗店に送り、オークション形式で最も高い報酬を提示した店に紹介していました。 「アクセス」が契約を結んでいた風俗店の数は全国46都道府県で1800店舗にも及び、5年間で7万8000人の女性を違法に紹介していたとみられています。 スカウトを通じて風俗店で働いた経験があるこちらの女性は、「ホストクラブで使う金を稼ぐため」だったといいます。 過去にスカウトを利用 「(稼ぎは)完全ホストに使っていて、先月は400万ぐらい稼いで、それをそのままホストにベット(使う)みたいな。多分、スカウト自身は自分の給料しか考えていない人が多い」 「アクセス」は女性の紹介料として、およそ60億円を得ていたとみられています。 警視庁生活安全部 宇田川佳宏 部長 「典型的なトクリュウ型の犯罪。彼女たちが仕事を通じて得たお金を搾取している者の存在がいるのかいないのか。そうしたことを解明していく必要がある」 捜査本部は「アクセス」解体を目指し、全国で風俗店の一斉摘発にも乗り出しました。 巨大スカウトグループ「アクセス」の解体を目指す警視庁・保安課。今年1月下旬、捜査員が集まったのは、石川県加賀市です。 警視庁保安課 森浩史 対策官(当時) 「以前に捜索した事務所から(アクセスが)女性たちを派遣している(店の)リストが出て、石川県下の性風俗店で働いてると情報が分かったので、本日、摘発に乗り出す」 石川県警との合同捜査で、「アクセス」のスカウトと違法な風俗店の結びつきを明らかにするのが目的です。 雨の中、現場に向かう捜査員たち。マークしていたのは、北陸を代表する温泉街にある風俗店です。 警視庁保安課 森浩史 対策官(当時) 「お客さんが入ってからサービスが始まるまでに時間があるので、それを見極めて、捜査員が入る」 “失敗は許されない”…現場に緊張が走ります。 記者 「続々と捜査員が店舗の中へ入っていきます」 捜索は4時間におよびました。 署に戻った捜査員は早速、押収した証拠品を調べます。なかには、従業員名簿や女性の勤務状況を示す手書きの管理表も。そして…。 捜査員 「(郵便物の)控えが現場から押収されました。ここにアクセスと書いてあることから、アクセスとの繋がりが明白になりました」 店が「アクセス」に報酬を支払っていたことを示す重要な証拠です。 こうした捜査を全国に広げ、捜査本部はアクセスと契約していた風俗店など9店舗を摘発しました。 そして、「アクセス」本隊にも捜査のメスが入ります。 「アクセス」のNo.2、村上裕太容疑者(33)など、警視庁はきょうまでに幹部ら12人を逮捕。そして、リーダーの遠藤容疑者を風俗店からの「スカウトバック」と呼ばれる報酬、およそ1億2000万円を隠した疑いで再逮捕しました。 警視庁保安課 半田正浩 課長 「(アクセスの)主要幹部のほとんどを逮捕した。アクセスと同様、人身取引とも言える手口で女性を搾取するスカウトグループは、いまだ活動している状況が見受けられます」