マッチングアプリ悪用のデート商法被害が拡大 「犯人側にとって好都合」狙われる20代

マッチングアプリで出会った若者に高額なコンサルタント契約を違法に勧誘したとして、福岡市の男らが特定商取引法違反などの疑いで福岡県警に摘発された事件。アプリを悪用し、恋愛感情や悩みにつけ込むデート商法は全国で相次ぎ、被害者の半数は20代だ。100万円を支払った同県内の20代女性は「親身に相談に乗ってもらえると思った」。識者は「お金の話はすぐ疑ってほしい」と注意を呼びかけている。 2022年5月下旬、新型コロナ禍でも交友関係を広げようとマッチングアプリに登録した女性の元に、20代半ばの男性から「いいね」が届いた。やりとりすると、お笑い好きで話が合う。「直接会って話したい」との積極的なアプローチに応じることにした。 福岡市・天神の居酒屋で対面した男性は「背が高く清潔感もあり好印象」。趣味やテレビ番組の話で盛り上がり、やがて話題は仕事や生活の悩みに移った。女性がいずれ転職や1人暮らしを考えていることを明かすと、男性は「知り合いが無料で相談に乗ってくれるよ」。翌日、男性が勤める会社に案内された。 営業担当の別の男性が悩みに優しく助言してくれ、「家賃の価格交渉や転職先、株式投資など何でも一生相談できる」とコンサルタント契約を勧誘された。「知識のある人が親身に相談に乗ってくれるならいいか…」。女性は悩んだ末に消費者金融で借金して100万円を支払った。 後日、この会社についてインターネットで調べると、「詐欺をしている」との情報が出てきた。 ◆ ◆ デート商法はかつて、街頭アンケートなどを装って接近する手口が主流だった。近年はマッチングアプリの普及で、犯人側にとっては“客”への接触が容易になった。国民生活センターによると、昨年度に寄せられた相談は939件で、10年前の2倍超に増えた。 県警が特定商取引法違反(目的隠匿勧誘)などの疑いで逮捕した会社員会野英雄容疑者(38)=同市城南区=は、女性が連れて行かれた会社の実質経営者。同容疑で書類送検された元従業員の20代の男女4人はアプリで若者を誘い出す役や営業担当だった。 県警によると、元従業員たちは最初に居酒屋などで対面した時の会話から勧誘の糸口を見つけ、社内で共有。営業担当が相手の悩み事などに合わせて応対し、契約に結びつけていた。マニュアルは会野容疑者が作成していたという。 18年5月~24年6月に390人と契約して約3億9千万円を集めた。契約者は全員20代で、捜査幹部は「社会経験の浅い若者を狙ったのだろう」。捜査関係者によると、元従業員もかつてはデート商法の被害者で、会野容疑者に誘われて加担する側に回った。報酬は歩合制で契約額の1~3割を受け取っていたという。 今回取材に応じた女性はその後、消費生活センターに相談し、クーリングオフが適用されて全額を取り戻した。「ネットで出会った人を最初から信用するのは危険だ」と語る。 若者の情報リテラシーに詳しい高橋暁子成蹊大客員教授は「20代は借金やクレジットカードの作成が可能になる上、アプリで人と出会うことに抵抗がない世代で、犯人側にとっては好都合。個人情報は極力相手に伝えないなど、犯罪に巻き込まれないよう気を付けてほしい」と訴えている。 (笠原和香子)

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