3月30日に投開票された福岡県大任町長選で、現職の永原譲二町長(72)は一騎打ちとなった対立候補に得票で3倍差をつけて圧勝した。それから約3カ月後の6月18日、陣営の運動員だった男性が公職選挙法違反(買収)容疑で逮捕された。当初から圧勝が予想された選挙戦だったにもかかわらず、なぜ買収事件に発展したのか――。 逮捕されたのは、大任町大行事、土木建築会社社長、長藤優太容疑者(30)。逮捕容疑は、告示翌日の3月26日、期日前投票所に知人2人を連れて行き、永原町長に投票した報酬としてそれぞれ現金3万円を手渡したとしている。 事件があったとされる4日後、永原町長は2431票を獲得し、814票だった無所属新人(56)を降して6選を果たした。 一方、「金は渡してない」と容疑を否認しているという長藤容疑者と「大任町」は密接な関係を有していた。 長藤容疑者は2021年4月、大任町で土木建築会社を創業。同年から町発注工事の指名競争入札に参加し、21年度は4件(計4020万円)▽22年度は6件(計7376万円)▽23年度は4件(計7261万円)▽24年度は11件(計1億9509万円)--と、4年間で少なくとも計25件(計3億8166万円)落札していた。 帝国データバンクによると、同社の23年の年間売上高に占める町発注工事の受注額の割合は6割で、24年は8割を占めるなど同工事に経営が依存した状態だったとみられる。 捜査関係者によると、長藤容疑者は居住する町営住宅の住民会で、永原町長を支援する趣旨の取り決めをした際、率先して活動していたという。こうした事情も踏まえ、捜査関係者は、長藤容疑者が今後も良好な関係を築き、引き続き工事を受注できるよう「町長にアピールしたい思いで買収して票を集めた可能性もある」と話す。 一方、永原町長は町を通じて「現在捜査中であり、事実関係も分からない状況ですのでコメントは差し控えさせていただきます」としている。【栗栖由喜】