「未来見据えた投票行動を」 前横浜市教育委員(教育長職務代理委員) 中上直氏

■教育現場には課題山積 深刻さを増すいじめや不登校をめぐる問題、教職員の働き方改革、老朽化する施設など、教育現場には切迫した課題が山積している。有権者には未来を見据え、いかなる方向にかじを切っていくべきなのかを踏まえた投票行動が求められる。 小学生から大学生までを見てきたが、子供たちのストレス耐性が弱くなり、コミュニケーション能力が落ちていることを強く感じる。学力はもちろん大事だが、協調性や忍耐力などいわゆる非認知能力(数値化できない能力)を習得する場としての学校の役割が重みを増してきている。それが生きる力となる。 無償化の流れが加速する学校給食に目を向けると、重要なのは食育だ。残食率を取り上げ、レシピの見直しを求める声もあるが、栄養のバランスが取れた食事を取ることの重要性をしっかり学ぶ機会を設けることが必要だ。 〝ブラック職場〟といわれることもある教育現場だが、例えば、中学校ではその一因が部活動であるとされ、働き方改革の中心になるだろう。国は部活動の地域移行を促すが、それは部活動の有料化を意味する面もあり、体制整備にはもう少し時間がかかるかもしれない。 ■教育DXに期待 一方で、わいせつ事件がらみの不祥事が続発する状況に目を向けたとき、強く感じるのは自浄能力の欠如だ。諸策を講じているはずなのに、先月には児童を盗撮し交流サイト(SNS)のグループチャットで共有したとして教員が逮捕された。横浜市に限らず、教師に厳しい視線が向けられている。 性犯罪歴を確認できるシステムをつくり、小中高校などに確認を義務づける日本版DBS「こども性暴力防止法」が来年12月から施行されるなどの策が取られている。だが、摘発される教員には初犯が多く、これまでの対策では抜本的な再発防止策になっていないことも明らか。教職員の意識改革が不可欠だ。 大きな期待がかかるのは教育DX(デジタルトランスフォーメーション)だ。セキュリティーや予算などの課題はあるものの、授業の準備でも板書がパワーポイントになり、子供一人一人の習熟度に合わせた学習メニューの提示もよりやりやすくなれば、教職員の業務の効率化にも寄与するのは間違いない。(聞き手 橋本謙太郎) ◇

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