角川元会長「人質司法」訴訟、大川原化工機事件の遺族が裁判所を批判

捜査機関に逮捕・勾留された後、罪を否認すると保釈されない「人質司法」により苦痛を受けたとして、出版大手「KADOKAWA」の角川歴彦元会長(81)が国に賠償を求めた訴訟の第3回口頭弁論が14日、東京地裁であった。原告側は、冤罪(えんざい)で逮捕されて保釈が認められないまま病死した大川原化工機の元顧問の遺族が、保釈を認めない裁判所を批判した陳述書を提出した。 角川氏は、東京五輪・パラリンピックをめぐる贈賄罪で逮捕・起訴され、東京地裁で公判中。角川氏は訴訟で、200日以上の勾留中に体調が悪化して保釈を複数回求めたのに認められなかったとし、長期勾留は憲法違反だなどと訴えている。 一方、大川原化工機の事件では、製品を不正輸出した疑いで社長や元顧問の相嶋静夫さん(当時72)ら3人が逮捕された。相嶋さんは勾留中に胃がんを発症し、治療のために求めた保釈請求が何度も退けられた末に亡くなった。東京地検はその後、不正輸出ではない可能性があるとして社長らの起訴を取り消した。 この日の訴訟では、相嶋さんの長男が「父は犯罪に当たらない容疑で身体拘束を受け、医療へのアクセスを妨害された」と訴えた陳述書が提出された。長男は、保釈請求を退けるなどした31人の裁判官の名前を示し、「なぜ判断ミスの連鎖が起きたのか。裁判所は検証を徹底的に行う必要があるが兆しはない」と批判した。 弁論後に角川氏らと会見した相嶋さんの長男は「拘置所の中で体調を崩したのに保釈が認められなかった点など、二つの事件は基本的に構図が同じだ」と指摘。裁判所は、人質司法の問題と向き合うべきだと訴えた。(黒田早織)

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