福井・中3殺害 前川さんに再審無罪判決 名古屋高裁金沢支部

1986年に福井市で中学3年の女子生徒(当時15歳)を殺害したとして、殺人罪で懲役7年が確定し、服役した前川彰司さん(60)に対するやり直しの裁判(再審)で、名古屋高裁金沢支部(増田啓祐裁判長)は18日、無罪判決を言い渡した。 女子生徒は86年3月20日、福井市の市営住宅で、めった刺しにされて死亡しているのが見つかった。 有力な物証はなかったものの、「前川さんから犯行の告白を受けた」「血が付いた服を着た前川さんを見た」などとする証言に基づき、福井県警は87年3月、前川さんを逮捕した。 前川さんは遺体発見前夜に事件を起こしたとされたが、関与を一貫して否認。1審・福井地裁(90年9月)は「証言は信用しがたい」として無罪を言い渡した。 これに対し、2審・名古屋高裁金沢支部判決(95年2月)は「証言は大筋で一貫し、高度の信用性が認められる」として無罪を破棄し、懲役7年を言い渡した。逆転有罪判決は後に確定した。 前川さんは服役後の2004年に第1次となる再審請求をした。11年11月に名古屋高裁金沢支部が再審開始を決定したが、検察が異議を申し立て、名古屋高裁が13年3月、再審開始決定を取り消した。 前川さんは第2次の再審を請求。名古屋高裁金沢支部が24年10月、弁護側が提出した新証拠を基に、前川さんが事件に関与したとする証言について「捜査に行き詰まった警察の不当な誘導を受けて、体験していない事実を証言したのではないかという重大な疑問が生じている」として、再審開始を決定した。 また、前川さんに有利な証拠を検察が隠そうとしたとも指摘し、「不誠実で罪深い。到底容認できない」と異例の批判をしていた。 再審は3月に初公判が開かれ、即日結審した。 検察側は「証言は互いに支え合い、高い信用性がある」と有罪を求め、弁護側は「捜査機関の証拠隠しや事実の捏造(ねつぞう)があった」と無罪を訴えていた。【国本ようこ】

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