広島県庄原で高齢女性殺人事件 発覚から1カ月、犯人特定に至らず長期化の様相 山あいの小さな集落に緊張感

広島県庄原市東城町粟田の民家で、この家に1人で暮らす女性=当時(84)=が殺害された事件は24日、発覚から1カ月となる。広島県警の捜査本部は50人態勢で現場周辺の聞き込みや押収資料の鑑定を進め、県境を越えて防犯カメラの映像を収集している。地道な捜査を続けるが、犯人の特定には至らず、長期化の様相を呈している。 東城町中心部から車で約15分。岡山県新見市と接する粟田地区では青々と伸びたイネが風に揺れる。民家が点在し、山裾の女性方は規制線が張られたままでカーテンも固く閉ざされている。独居の高齢者が狙われた凶行―。現場には21日も捜査員の姿があり、今も小さな集落を緊張感が包む。 事件発生後、捜査員は周辺住民のもとを繰り返し訪ね、聞き込みを重ねる。「都市部と違い、防犯カメラの映像がやはり少ない。時間をかけて情報を集めるしかない」と捜査関係者。粟田地区を南北に貫く県道で検問し、ドライブレコーダーの映像を収集。新見市にも捜査員を派遣し、道沿いの民家を回りカメラ映像を集めている。 女性が遺体で見つかったのは6月24日午後5時半ごろだった。女性の親族に安否確認を頼まれた住民が自宅を訪問。無施錠だった勝手口から入り、玄関付近で頭から血を流して倒れているのを見つけた。複数の住民は前日の午前10時ごろに女性の姿を目撃しており、その後に殺害されたとみられる。 死因は司法解剖で失血死と判明。頭や顔を硬い物で複数回殴打され、犯人に強い殺意があったとみられる。捜査関係者によると、現場に凶器は残されていなかった。室内は目立って荒らされたような形跡はないが、女性が所有する金品の一部が見つかっていない。 捜査本部は犯人が金品を奪った可能性があるとみる一方、捜査幹部は「(動機は)あらゆる可能性を広く捉えて調べている段階」とする。第一発見者の女性は発生からこの間、衝撃がぬぐえず、怒りで声を震わせる。「なぜ…」。地区ではその疑問が消えない。 捜査本部がある庄原署は23日、署員7人が粟田地区を中心にパトロールを実施。住民にチラシを渡して情報提供を呼びかけ、防犯指導もした。80代男性は「みんな不安がっとる。早く解決してほしい」と地区の思いを代弁する。同署の吉田和生警備課長は「一日も早い犯人逮捕に努める」と力を込めた。

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