滋賀県東近江市の湖東記念病院で2003年に死亡した患者への殺人罪で服役後、裁判をやり直す再審で無罪が確定した元看護助手の西山美香さん(45)が、国と県(県警)に計約5500万円の損害賠償を求めた訴訟で、県側は、警察の捜査は違法だったと認めた大津地裁判決を受け入れ、控訴しない方針を固めた。西山さんの弁護団が25日、取材に明らかにした。 西山さん側が控訴しなければ、県に対する約3100万円の賠償責任が確定する。 西山さんは警察の取り調べに対し、患者の人工呼吸器を外したと「自白」したことに基づき04年に逮捕され、殺人罪で懲役12年の判決が確定し、服役した。大津地裁の再審で20年、患者は病死の可能性があり、「自白」も誘導されたとして無罪判決を受け、確定した。 西山さん側は20年12月、捜査の違法性を問うため国と県を提訴した。 今月17日の大津地裁判決は、取り調べを担当した男性警察官が、人工呼吸器の操作について虚偽供述を強く誘導した一方で、西山さんの心情をコントロールして虚偽自白を維持させようとしたと指摘。県警の取り調べを「社会通念上相当と認められる範囲を超えたもの」と厳しく指摘した。 患者が自然死した可能性を示す捜査報告書を検察に送らなかったことについては、「証拠調べされていれば、患者の死因判断にも重大な疑義が生じ、検察官は起訴に及ぶことはなかった」と言及。警察が職務上の法的義務に反した判断だったとして、事案の真相を明らかにする刑事訴訟法の目的に反すると断じた。 一方、検察の捜査、判断については「相応の合理性があった」とし、違法性を認めなかった。(真常法彦)