2019年は言論・表現の自由をめぐっていろいろなことが起きた年だった。一番大きいのは8月開催の「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展・その後」の中止事件だが、その前には4月公開の映画『主戦場』をめぐる騒動があった。焦点になったのは慰安婦問題とそれを象徴した「平和の少女像」だった。 さらに『沈黙―立ち上がる慰安婦』というドキュメンタリー映画にも、各地の上映会に右翼団体が押し掛けるという状況が続いていた。 その映画の監督が朴壽南(パクスナム)さん。1935年生まれの在日2世だった。右翼団体の攻撃は激しかったが、朴監督がすごいのは、その騒動のおかげでこの映画は全世界で取り上げられた、映画が広がったのは右翼のおかげだ、と上映会などでユーモアまじりに語っていたことだ。この腹の座り方には驚いた。 それから6年。その朴監督と娘の麻衣さんが共同監督を務める映画『よみがえる声』が、8月2日からポレポレ東中野を始め全国で順次公開される。これは朴監督の集大成とも言える映画で、これまでの彼女の半生を追い、同時にそれが日本と朝鮮の歴史をたどることにもなるという作品だ。その朴壽南監督と、その背中を見て育ち今回共同監督を務めた麻衣(マイ)さんにインタビューした。 (篠田博之)