日本人だけでなく米国の同盟国も反スパイ法の餌食になっている! ビジネスや学術交流を脅かす中国の反スパイ法

中国の反スパイ法は2014年に施行されて以来、外国人の拘束や実刑判決が注目を集めている。特に日本人の事例が相次ぐことから、国内では反スパイ法=日本人のようなイメージが先行しているが、外を見ると米国人、カナダ人、オーストラリア人、台湾人、韓国人も同法に基づく拘束の対象となっている。この法律はスパイ行為の定義が曖昧で、国家安全保障を理由に広範な運用が可能なため、国際社会から恣意的運用の懸念が指摘されている。2023年7月の改正では、対象が「国家の安全と利益に関わるデータ」に拡大され、外国人のビジネスや研究活動への影響がさらに強まっている。 米国人の場合、具体的な反スパイ法適用事例は少ないが、2018年に中国で米国人実業家が国家安全を脅かした疑いで拘束されたケースが報じられた。この人物は最終的に釈放されたが、詳細は非公開のままだった。また、米国のコンサルティング企業社員が中国の企業調査中に拘束される例もあり、反スパイ法の影響がビジネス界にも及んでいる。米国政府は中国当局に対し、透明な司法プロセスと早期解放を求めているが、進展は限定的だ。 カナダ人では、2018年に元外交官マイケル・コブリグ氏と実業家マイケル・スペーバー氏がスパイ容疑で拘束された事件が国際的に注目された。このケースは、カナダでファーウェイ幹部が逮捕された報復と見られ、両氏は約3年間拘束された後、2021年に釈放された。反スパイ法の適用は外交摩擦と連動し、カナダ政府は中国の法運用を「人質外交」と批判している。 オーストラリア人では、2019年に作家で中国系オーストラリア人の楊恒均氏がスパイ容疑で拘束された。2021年に非公開裁判で懲役7年の実刑判決を受けたが、具体的な罪状は明らかにされていない。オーストラリア政府は司法の透明性を求め、領事面会を繰り返しているが、釈放には至っていない。この事例は、中国の反スパイ法が政治的背景を持つ人物にも適用されることを示している。 台湾人については、2020年に台湾のNGO職員である李明哲氏が国家安全を脅かしたとして拘束され、5年の実刑判決を受けた。台湾当局はこれを反スパイ法の拡張適用とみなし、中国の台湾への圧力の一環と批判している。李氏は2022年に刑期を終え帰国したが、台湾人ビジネスマンや研究者の拘束リスクは依然高い。 韓国人では、2024年10月に半導体関連企業に勤務していた50代男性が反スパイ法違反で逮捕された。これは改正法施行後、韓国人初の逮捕事例とされる。韓国政府は積極的な交渉を求められているが、中国側は詳細を公開せず、半導体技術を巡る国際競争の文脈で注目されている。 これらの事例から、反スパイ法は外国人の職業や活動内容に関係なく適用され、特にビジネスや学術交流の場でリスクが高まっている。中国に進出する企業や個人は、曖昧な法基準と不透明な司法プロセスへの対応を迫られており、各国政府は自国民保護のため外交努力を続けるが、解決は容易ではない。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする