北海道で空き家を狙った侵入窃盗事件が相次いでいる。北海道警察によると、今年上半期(1~6月)の認知件数(速報値)は79件で、既に昨年1年間の62件を上回った。被害額も約530万円に上り、2020年の統計開始以降、最悪のペースで推移。少子高齢化で空き家が急増していることが背景にある。所有者が管理できず、金品を置いたままの家も多いとみられ、道警が注意を呼び掛けている。 「空き家だから捕まるリスクが低いと思った。少なくとも100件は繰り返した」。5月末に伊達市の空き家に侵入し、ゲーム機など3点(8万5千円相当)を盗んだとして、7月1日に窃盗などの疑いで逮捕された札幌市の無職の男(20)は道警の調べにそう供述した。 この家には70代女性が1人で暮らしていたが、今春に介護施設に入所。盗まれたのはかつて家族が遊び、女性が保管していたゲーム機などだった。男は共に逮捕された10~30代の無職の男3人と現場を複数回、下見し、部屋の明かりがつかず車がいないことを確認して侵入。約20分かけて室内を物色したとみられる。 道警は、男らが道内各地で空き家を狙い、貴金属や家電を盗んでリサイクル店に売却し、数百万円の利益を得たとみて、裏付けを進めている。 空き家窃盗は全国で急増する。警察庁によると、24年の認知件数は9314件、被害額は約12億9千万円。20年比で認知件数が約3倍、被害額が約4倍になった。 北海道は認知件数に増減があるものの、被害額が3年連続増加。24年は21年比約6倍の約560万円で右肩上がりだ。今年は上半期で昨年1年間に迫り、約2倍のペースで推移している。 総務省が23年に実施した住宅・土地統計調査によると、北海道の空き家は約45万2千戸。18年の前回調査から約7万2千戸増え、住宅総数に占める割合(空き家率)は15.6%に上った。 防犯対策に詳しい「セコムIS研究所」(東京)の浜田宏彰研究員は草が伸びていたり、郵便物がたまっていたりすると狙われやすいと指摘。「空き家を『管理している』とアピールすることが対策になる」と話す。 管理代行サービスも登場している。日本郵便は1月から有料の「空き家みまもり」を始めた。遠方にいて管理が難しい所有者らに代わり、郵便局員が月1回、空き家の状態を確認する。 道警捜査3課の担当者も定期的な管理の重要性を強調。被害に気づくのに時間がかかる例も多く「金品を残さず、定期的に訪れて異変がないか確認してほしい」と警戒を求めた。