AIが犯人役、手口リアルに 下関市でSNS型詐欺被害の疑似体験 LINE活用、山口県内初

交流サイト(SNS)を悪用した投資詐欺やロマンス詐欺の被害が県内でも多発する中、生成人工知能(AI)を活用して再現した詐欺の手口を疑似体験してもらう啓発イベントが21日、山口県下関市伊倉新町の商業施設、ゆめシティであった。通信大手のソフトバンクが無料通信アプリ「LINE(ライン)」向けに開発したツールを使った体験会で、山口県内では初めて。 詐欺の手口をリアルに感じることで被害の未然防止につなげようと、下関署とソフトバンクが主催。買い物客らは用意されたスマートフォンを操作しながら、生成AIが再現したロマンス詐欺や投資詐欺の犯人グループとLINE上でやりとりした。 ロマンス詐欺の疑似体験では、飛行機のパイロットを思わせるアントニオが「君との会話はまるで雲の上でのひとときのように心が温かくなる」「これからもっとすてきな瞬間を共有できればうれしい」などと言葉巧みに接近。しかし最後には「助けて」と振込先の口座番号を示して金銭を要求してきた。 警察庁から提供を受けた大量の被害事例を基にAIが犯人役の文面を作成しているといい、最新の手口も反映。AIが作成した警察官を名乗る男の映像がテレビ電話で流れたり、逮捕状と偽った画像を送り付けたりもする。体験した市内の主婦(72)は「優しい言葉で巧みに言われると信じてしまいそう。一人で抱え込まないようにする」と話した。 ソフトバンクCSR本部の吉竹康之参与は「多くの人が安心して使っているLINEに犯人グループは導いてくるため、被害者の92%がLINE経由でだまされている。LINEで体験しておくことが抑止につながる」。下関署の上野克裕生活安全官は「さまざまな機関や団体と連携して被害防止に向けた取り組みを進めていきたい」と語った。 県警によると、今年に入ってから7月末までにSNS型投資・ロマンス詐欺は県内で59件発生し、被害額は約3億2031万円に上っている。

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