神奈川県小田原市の建設会社から、便宜を図った見返りに20万円分の商品券を受け取ったとして、県警捜査2課などは3日、市環境部長で同市栄町の樋口肇容疑者(58)を収賄容疑で逮捕した。県警は同日午後、市役所に家宅捜索に入った。 県警は、商品券を渡したとされる建設会社の当時の代表取締役と営業部長に関しても贈賄の容疑で捜査している。 樋口容疑者の逮捕容疑は、2024年8月と25年2月、建設会社の当時の代表取締役と営業部長から下水道工事の早期実施と、業者の親族が購入する予定だった土地の近くにあるゴミ集積所の移動を依頼されて便宜を図り、その見返りに商品券(額面計20万円)を受け取ったとしている。県警は樋口容疑者の認否を明らかにしていない。 樋口容疑者は、24年7月、市環境部長に就任。市内の清掃や環境衛生事業をめぐる総合調整などを主導する立場だった。建設会社とは約10年の付き合いがあったといい、営業部長が市役所の環境部長室で商品券を渡していたという。【宮本麻由】 ◇市長「痛恨の極み」 部長級の職員が逮捕される前代未聞の事態を受けて、小田原市の加藤憲一市長ら幹部職員は3日午後、臨時の記者会見を開いた。加藤市長は「痛恨の極みだ。全職員の綱紀粛正をはかる」と謝罪。この事件に関連して、複数の市職員が県警の事情聴取を受けたことも認めた。 逮捕された樋口肇市環境部長は昨年から「コンプライアンス推進委員会」のメンバーも務めていた。加藤市長は「意欲的で、かつては市総合計画の策定をリードした。信頼しており、『よもや』というのが率直な印象だ」と述べた。 市の担当職員によると、下水道工事は要望を受けて、予算や工事時期を調整する。ゴミ集積所の移転は自治会からの申し出により行うというルールもあるという。樋口部長の行為は、そのルールも破った形となる。 市では最近、事務的なミスも相次いでいる。加藤市長は「今回の事件は、樋口部長本人の脇の甘さが招いたもので、事務的なミスとは違う。だが、通底しているものはあるかもしれない」と述べ、市職員に改めて、高い倫理観を求めていく方針を示した。【本橋由紀、横見知佳】