救急車がインバウンド向け「白タク」の路駐で立ち往生 運転手は道を譲らず… 「緑ナンバー」も急増の深い闇

一部の観光地ではインバウンド(訪日外国人客)相手に営業する「白タク」のマナー違反・法令違反が問題視されている。「緑ナンバー」車両も現れ、古都・鎌倉(神奈川県)の交通網は混乱、対応に苦慮している。 * * * ■救急車が「渋滞」で進めず JR鎌倉駅すぐの「小町通り」は、土産物を手にしたり、食べ歩きを楽しんだりするインバウンドでにぎわっていた。 そんな観光客がひしめく小町通りとほぼ平行して南北に走る「若宮大路(わかみやおおじ)」は、鎌倉市のメインストリートだ。南の由比ケ浜から鶴岡八幡宮に通じる約2キロの参道は交通量が多く、普段から渋滞が激しい。 若宮大路を歩いていると、南からサイレンを鳴らしながら救急車が走ってきた。 だが、その先はひどく渋滞していた。若宮大路の片側の車線の幅は約4メートルで、高速道路(基本3.5メートル)よりも広く、本来なら緊急車両の通行に支障はない。けれども、路肩に駐車している複数台の車が道をふさいでいるため、一般車両が道を譲ることもできない。救急車は減速し、のろのろと進んでいく。 ■運転手はスマホをいじるばかり 迷惑駐車の車へ近づくと、複数の車の運転席に運転手らしき男性がいた。駐停車禁止エリアであるにもかかわらず、男はスマホをいじるばかりで、車を移動する気配はない。 路肩に駐車している車はどれもワンボックス車で、黒のトヨタ・アルファードが多かった。後部座席の窓はスモークフィルムが張られている。 記者は5分以上、救急車が渋滞に巻き込まれてのろのろ進む様子を見ていた。迷惑駐車ドライバーから無視され、緊急車両が進路を確保できない――。目を疑う光景だった。 ■日常的に「白タク」らしき車を見かける いま、鎌倉市内に白タクが増えているという。「白タク」とは、金銭の授受を行って旅客(利用者)を運送する「白ナンバー」の車両のこと。無許可のタクシー行為で「違法」だ。鎌倉市の担当者は、「今では日常的に白タクを見かけます。住民は非常に迷惑している」と話す。 若宮大路に迷惑駐車していたのも、「インバウンド向けの『白タク』の可能性が高いと思います」と言う。 ■旗のロゴは中国の大手旅行会社 駅前のロータリーでも若宮大路同様、白タクらしき車両が頻繁に目撃されている。 バス停前に白ナンバーのアルファードが停車すると、後部のドアから5人ほどが降りてきた。そのひとり、中年女性は小旗を掲げ、ほかの4人を小町通りに案内していった。後で調べたところ、小旗のロゴは上海に拠点を置く中国の大手旅行会社のものだった。 別のワンボックス車は小町通りの入り口に駐車。すると間もなく若い男女8人ほどが小町通りから歩いてきて、車に乗り込んだ。彼らの会話は中国語だった。

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