北九州市小倉南区のファストフード店で中学3年の男女2人が殺傷された事件で、福岡地検小倉支部は26日、殺人容疑などで逮捕されていた小倉南区の無職、平原(ひらばる)政徳容疑者(44)を殺人、殺人未遂の罪と銃刀法違反で福岡地裁小倉支部に起訴した。地検小倉支部は精神疾患が事件に与えた影響を調べるため、2度の鑑定留置を実施していたが「責任能力はあると判断した。程度については、公判で明らかにする」と説明した。 起訴状などによると、平原被告は2024年12月14日午後8時25分ごろ、小倉南区徳力(とくりき)1の「マクドナルド322徳力店」で、市立中3年、中島咲彩(さあや)さん(当時15歳)=小倉南区=の左腹部を狩猟用ナイフ(刃渡り約11センチ)で刺して失血死させ、一緒にいた同級生の男子生徒の右腰部を刺して約1カ月の重傷を負わせたとしている。地検小倉支部は認否を明らかにしていない。 福岡県警は現場から逃走した人物を防犯カメラ映像などを基に捜査。事件5日後の12月19日、自宅にいた平原被告を男子生徒への殺人未遂容疑で逮捕し、25年1月9日に中島さんへの殺人容疑で再逮捕した。平原被告は捜査段階で、殺人未遂容疑については殺意を否認し、殺人容疑は「認めない」としていた。 捜査関係者によると、平原被告は2人と面識がなかったとみられ、「2人に笑われたと思った」などと供述。事件に及ぶ動機としては飛躍があることから、地検小倉支部は当時の精神状態を慎重に調べるため、医師を替えつつ2度の精神鑑定を実施し、期間は計約8カ月間にも及んだ。その結果、精神疾患が事件に一定の影響を与えたものの、刑事責任を問えると判断した。26日が勾留満期だった。 地検小倉支部の石島正貴支部長は「責任能力は立証できると判断した」とした上で「完全責任能力か、心神耗弱かを公判前に明らかにするのは適切ではない」とし、それ以上は言及しなかった。 亡くなった中島さんの父は事件後、初めて報道機関にコメントを寄せた。「起訴にあたっての遺族の思い」と題し「突然咲彩の命は奪われ、私たち家族の生活は一変しました。何が起こったかもわからず、どれだけ痛くてつらくて、嫌な思いをしたかと思うと、可哀そうで今でも涙が止まりません」と苦しい胸の内を吐露。「毎日、咲彩に会いたいという気持ちは変わりません。可愛い咲彩の輝かしい未来・人生を奪ったことは許しがたく耐えられません」とつづった。 2度の鑑定留置により起訴までに長期間を要した点については「何もわからない状況が続いたことは大変苦しい時間でした」と言及。「無差別で未成年が被害に遭うような事件が二度と起こらないよう最も重い刑罰を希望したい」と訴えた。【井土映美、川畑岳志】