米ABC全系列局でキメル氏の番組放送再開へ シンクレアとネクスターが発表

米ディズニー傘下のABCテレビによる深夜トーク番組「ジミー・キメル・ライブ!」の放送が、すべてのABC系列局で再開されることになった。シンクレア・ブロードキャスト・グループとネクスター・メディア・グループは26日、1週間の放送中止を経て、自分たちが持つABC系列局でキメル氏の番組を再開すると発表した。 全米各地でABC系列局を運営する両社は、右派活動家チャーリー・カーク氏の殺害に関するキメル氏の発言をめぐり、ABC本体が番組放送を23日に再開した後も、番組を放送していなかった。 アメリカ最大のABC系列局グループであるシンクレアは、視聴者、広告主、地域のリーダーからの「思慮深いフィードバック」を受けて、番組の放送再開を決めたと説明した。 シンクレアは発表で、ABCおよび親会社のディズニーとの協議が「建設的に継続」していると述べた。同社はディズニーに対し、「説明責任」を促進するための措置を提案したが、現時点ではいずれも採用されていないという。 アメリカ最大のローカルテレビ局所有者であるネクスターも。ABCとの前向きな協議を挙げ、「懸念に対して建設的に対応してくれたことに感謝している」と述べた。同社は「(言論の自由を保障する)憲法修正第1条の保護に尽力している」としている。 23日の番組は、ネクスターとシンクレア両社が持つABC系列局(全体の約25%にあたる)が放送しなかったにもかかわらず、626万人が生放送で視聴し、記録的な視聴率となった。 両社が放送中止を解除したことで、首都ワシントン、ナッシュヴィル、ニューオーリンズ、シアトルなどに住むシンクレアおよびネクスターの視聴者は、キメル氏の番組を再び視聴できるようになる。 放送再開にあたってキメル氏は23日の番組冒頭で、「若い男性の殺害を軽んじる意図はまったくなかった」と発言。カーク氏に関する以前の発言について遺憾の意を示す一方で、ドナルド・トランプ大統領や連邦通信委員会(FCC)のブレンダン・カー委員長による「マフィア」的な検閲手法を批判した。 FCCはラジオ、テレビ、衛星の電波を規制しており、合併や品位に関する苦情など、幅広い事案に対して権限を持っている。 「我々の指導者は、冗談を受け入れられないあまり、人が生計を失うことを喜んでいる」とキメル氏は述べた。そのうえで、トランプ氏が公然と人の失職を望む姿勢について、「非アメリカ的」で「危険」だと主張した。 対するトランプ大統領はキメル氏の復帰に不満を示し、「ABCフェイクニュースがジミー・キメルに仕事を返してやったなんて信じられない」とソーシャルメディアに投稿した。 ■どのような経緯だったのか 右派活動家カーク氏が9月10日に銃撃されて死亡した事件では、タイラー・ロビンソン容疑者(22)が11日に逮捕され、殺人罪などで訴追された。 キメル氏は15日の放送で、トランプ氏の支持者らは「必死になって、チャーリー・カークを殺した子供が、自分たちとは全く違うと見せかけよう」とし、この事件で「政治的な得点を稼ごうとしている」と発言した。 また、事件に対するトランプ氏の反応を、「金魚をなくして悲しむ4歳児の反応だ」と述べていた。 このジョークを受けて、FCCのカー委員長は、キメル氏が「カーク氏の殺害犯について、アメリカ国民を直接的に誤解させようとしているように見える」と述べた。 カー氏の発言と、ABC系列局を運営する地方放送局からの懸念が重なったことで、ABCはキメル氏の番組を「無期限」で放送停止とした。 しかし、番組の停止措置は、連邦議会議員や労働組合、言論の自由の擁護者らから強い反発を招いた。著名人によるキャンペーンやボイコットは、ABCの親会社ディズニーが標的となった。 キメル氏の同業で深夜トーク番組を司会するジョン・スチュワート氏、ジョン・オリヴァー氏、スティーヴン・コルベア氏らも支援を表明したほか、数百人の著名人やハリウッド関係者がキメル氏を支持する書簡に署名した。コルベア氏の「ザ・レイト・ショー」は、来年5月に終了が決まっている。 ディズニーは22日、キメル氏と「思慮深い会話を重ねた」結果、番組の放送再開を決めたと発表した。 しかしネクスターは、「我々がサービスを提供する市場において、すべての関係者が敬意と建設的な対話の環境づくりに真剣に取り組むという確約が得られるまで」、キメル氏の番組を引き続き、別番組に差し替える方針を示していた。 同社は現在、競合テグナの買収を進めている。この買収は、FCCの承認を必要とする。 シンクレアも、代替番組を放送すると表明していた。 (英語記事 Sinclair and Nexstar to reinstate Kimmel on ABC stations)

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