劇場版『チェンソーマン レゼ編』が絶好調 原作愛にあふれたビジュアル&音楽を紐解く

劇場版『チェンソーマン レゼ編』は原作へのリスペクトと愛が大爆発した映画であった。本当に劇中のありとあらゆる箇所が行き届いた数々の原作愛で溢れかえっているのだが、ひとまず端的に筆者が最も感動したポイントをいうとするのならば、今作は「デンジくんがめちゃくちゃデンジくんだった」のである。特に彼の表情や顔面がとにかく原作そのまんまのデンジくんであったと言えるだろう。 例えば、物語序盤のデンジとマキマがデートの待ち合わせをするシーンでの、マキマに対する「カワイイ!!」の表情は原作の作画を忠実に再現しつつも今作ならではの演出として確変突入のようなテンションの表現が加えられているなど、今作ではそうした原作に忠実な作画にアニメならではの演出が施されることによって『チェンソーマン』のイメージを100%再現するどころか120%の形で共有できるクオリティとなっている。そして、レゼの全裸を目の前にしたデンジの頭の処理がまるで追いついていないかのような心の中まで、あえてグチャグチャのままにしつつも言い漏らさないセリフ群などにもそのリスペクトは現れていたと言えるだろう。とりわけ、今回の『レゼ編』なるエピソードでは「俺は俺のことを好きな人が好きだ」や「俺が知り合う女がさあ!! 全員オレん事殺そうとしてんだけど!!」など、恋に思い悩むデンジの独白や一人語りが多いゆえにデンジ語録が盛り沢山なこともあり、デンジのそうしたあらゆるリアクションが終始納得のデンジであったのだ。もちろん、セリフの徹底はデンジ以外の全てのキャラクターにとっても同じことである。 また、そうしたリアクションにとどまらず原作のコマを徹底的に尊重しつつ、コマとコマの間をきっちりと繋ぎながら自由に駆け抜けるような大迫力のアクションシーンも原作愛を感じられる大きな大きなポイントであった。そして、その最たる鍵は、暴力の悪魔がレゼに蹴りを入れる前にしっかりと足がムキムキに膨らむ描写や、レゼの「ゴキブリみたいだ」という原作通りのセリフをぴったりそのまま体感できる上下左右縦横無尽な鎖鋸鮫 VS 爆弾台風のシーンに見られるような、戦闘の流れや能力の丁寧な視覚的補足にあると言えるだろう。そういった点でも、漫画で読んでいたあのシーンやこのシーンの痛みもクリアに再び伝わる、流れの答え合わせもできるという『チェンソーマン』を十二分に堪能できる作品であった。そして、そんな愛に溢れたアクションの極め付けは、台風の悪魔とのクライマックスとなる単行本の表紙のようなカラーリングで画面を埋め尽くす決着シーンである。アニメーションとしてのわかりやすさや単なる原作の読み込みを超えた立体的な『チェンソーマン』へのリスペクトとなる件の演出はチェンソーマンファンからチェンソーファンへの特大サービスであるとも言えるだろう。 また、動きという意味ではアニメーションとしてケタケタと笑うレゼ、ピョンピョンと跳ねるような天真爛漫なレゼ、揺れるレゼの前髪なども劇場版ならではのとてつもない見どころだ。

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