日本維新の会に所属していた石井章元参院議員(68)=除名され議員辞職=が公設秘書の給与を詐取したとされる事件で、石井元議員が自ら親族の男性に公設秘書として名義を貸すよう依頼した疑いがあることが関係者への取材で判明した。東京地検特捜部は近く、秘書給与約800万円を国からだまし取ったとして、石井元議員を詐欺罪で在宅起訴するとみられる。 関係者によると、石井元議員は周囲に秘書給与詐取を否定。特捜部の任意の事情聴取にも、詐欺容疑を認めていなかった模様だ。ただ、特捜部は関係者の供述や物証から、逮捕をしなくても詐欺罪の立証が可能と判断したとみられる。 石井元議員は2021年、親族の男性を公設秘書として国会に届け出た。親族は約1年半にわたって公設秘書として登録されたが、特捜部は勤務実態はなく、国から給与として親族名義の口座に振り込まれた約800万円が詐取されたとみている。この際、元議員は親族に「名義貸し」を直接頼んだ疑いがあるという。 親族は、石井元議員が代表を務める社会福祉法人に勤務。元議員側は親族名義の口座の通帳やキャッシュカードの提出を求めた上で、地元事務所(茨城県取手市)に勤務する元議員の側近女性が口座を管理し、秘書給与を事務所経費の支払いなどに充てていたとみられる。特捜部は元議員と側近女性との間にも共謀が成立するとみて詰めの捜査をしている模様だ。 特捜部は8月27日、東京・永田町にある石井元議員の参院議員会館事務所や、地元事務所を家宅捜索した。公設秘書として届け出ていた親族以外の複数の人物についても勤務実態がなかった疑いがあるとみて調べていたが、立件対象には含めない方向で検討しているとみられる。 特捜部は24年8月にも、公設秘書の給与など約360万円をだまし取ったとして、自民党参院議員だった広瀬めぐみ氏(59)を詐欺罪で在宅起訴した。広瀬元議員を懲役2年6月、執行猶予5年とした東京地裁判決が25年4月に確定した。 石井元議員は取手市議を経て、09年衆院選で民主党(当時)から出馬して初当選し、1期務めた。16年参院選では日本維新の会の前身のおおさか維新の会から比例で出馬して当選し、22年参院選で再選していた。【北村秀徳、岩本桜、五十嵐隆浩、佐藤緑平】