生成AIでテレビ局はこう変わる〜一歩先行く韓国で最前線の制作現場を取材〜【調査情報デジタル】

映像制作に革命的な変化をもたらしつつある生成AI。この最先端技術を放送業界の現場に貪欲に取り込もうとしているのが、ITやエンタメに強い韓国だ。実際にどのようにして生成AIを活用しているのか、JNNソウル支局の渡辺秀雄支局長がソウルにあるテレビ局を取材した。 ■韓国のテレビ放送を目にしてよぎった危機感 「使えるようにしておかないと取り残される」――。韓国のテレビ番組で放送された生成AIの映像を目にした瞬間、そんな危機感が脳裏をよぎった。 猛烈なスピードで進化を続ける生成AI。その恩恵にあずかろうと、韓国のテレビ局ではこの技術を活用した映像制作が急速に広がっている。 選挙報道では候補者のキャラクターをCG動画にして視覚的に紹介し、AIアナウンサーが落ち着いた声で原稿を読み上げる。かつては未来の話と思われた技術が、すでに日常的な放送の現場に組み込まれているのだ。 韓国放送通信電波振興院によれば、国内のテレビ番組全体のうちすでに約1割が何らかの形で生成AIを導入済みだという。この割合は今後さらに拡大するとみられる。 背景には、YouTubeやOTT(オンライン動画配信サービス)の台頭による広告収入の減少や人件費の上昇など、放送局が直面する厳しい経営環境がある。制作コストの削減や制作期間の短縮の切り札として、生成AIは「救世主」とも「切り札」とも位置付けられている。 中でも、公共放送MBCの取り組みは注目に値する。6月に韓国の人気番組「神秘的なTVサプライズ」の中で放送されたVTRはこの技術の可能性を世に広く知らしめるものだった。 画家パブロ・ピカソが誤認逮捕された「名画モナリザ盗難事件」(1911年)を生成AIで再現した10分ほどの映像で、若き日の画家パブロ・ピカソが警察に連行されるシーンや荘厳なルーブル美術館の内部、当時のパリの街並みに至るまでそのクオリティーは非常に高く、多くの視聴者が驚かされた。そしてSNSには「すごい発展」「びっくりした」といった声が相次いだ。

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