議案否決に予定地変更 難航する大阪・岸和田市の新庁舎建設

老朽化した大阪府岸和田市役所の新庁舎建設計画が難航している。市は新庁舎建設の検討を2013年度から進めてきたが、事業者と結んだ仮契約の経緯が不透明として同市議会が関連議案を否決したり、建設予定地が変更されたりと、計画は二転三転。市は9月に3度目となる公募型プロポーザルを実施したが、参加事業者がなく中止となった。 現庁舎は5棟からなり、旧館は1954年に、新館は71年に完成した。阪神大震災(95年)の後に実施した耐震診断で、旧館は耐震性に問題ありとされ、新館についても「地震で倒壊や崩壊する危険性が高い」と指摘された。雨漏りや壁面のモルタルの剥落が確認されている。 市は13年度に新庁舎が必要とする報告書をまとめ、現庁舎横の駐車場に建設することを決めた。永野耕平・前市長=収賄や官製談合防止法違反容疑などで逮捕=が在任中の20年度、設計を含めた提案内容などを総合評価する公募型プロポーザルを実施。共同企業体の3業者から応募があったものの、市が有識者でつくる選定委員会に諮らずに2業者の失格を決め、残る1業者と仮契約した。選定委員4人が反発して辞任するなど混乱し、市議会は「公平性や透明性に欠ける」としてこの1業者との工事請負契約の議案を否決し、契約は白紙となった。 市は計画を一部変更して23年に改めて公募型プロポーザルを実施したが、参加を表明した事業者が辞退し、計画は進まなかった。 さらに、建設場所も問題視された。国土地理院が20年に公表した「大阪湾南東岸断層」が、現庁舎のほぼ直下に走っていることが判明した。市は24年、現庁舎から700メートルほど離れた市福祉総合センター横に変更し、基本計画を改定した。 市は提案上限価格を156億3058万円と決め、9月8~19日に公募型プロポーザル方式で事業者を募ったものの、参加事業者はなく中止になった。資材費の高騰や人手不足などが理由とみられる。 今後の方針は決まっていない。提案上限価格を引き上げる場合は議会の議決が必要で、時間がかかる可能性がある。目標の31年度の供用開始が見通せない状況で、佐野英利市長は9月26日の記者会見で「全ては私の責任と感じている。前に進めていく」と述べるにとどめた。【中村宰和】

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