学習塾での子どもの性被害が後を絶たない。性犯罪歴の確認を求める「日本版DBS」が来年12月に導入され、犯罪抑止への期待が高まるが、対象範囲や犯罪歴の扱いなどに課題もある。AERA 2025年10月6日号より。 * * * またしても、学習塾で性犯罪が起きた。 9月16日、警視庁少年育成課が不同意わいせつ容疑で逮捕したと発表したのは、「やる気スイッチグループ」が運営する個別指導塾「スクールIE」元教室長の男(45)だった。男は、勤務していた都内の教室で3月と5月、15歳の女子生徒の下着の上から胸を触るなどのわいせつ行為をした疑いがある。生徒がカウンセラーに相談して発覚した。 塾の講師による子どもへの性犯罪が後を絶たない。2023年には、大手中学受験塾「四谷大塚」の元講師の男が業務中、教え子の女児12人を盗撮した容疑で逮捕され、社会に衝撃を与えた。 「塾や学校など教育の現場は、性加害をしようと思う人にとって、加害しやすい構造になっている」 そう指摘するのは、性被害防止の活動をしている民間団体「ひいらぎネット」代表の永守すみれさんだ。 「塾の講師や教員といった指導的立場にある人は、誰かに行動を制限されたり咎められることがほとんどありません。そのため、加害行為をしようと思えば好き放題できる環境にあります」 ■証拠もみ消しが可能 たとえ教室へのスマホの持ち込みを禁止しても、ネットで小型カメラを簡単に購入できる。防犯カメラを設置しても、カメラの画角から外れる位置に生徒や児童を座るよう仕向けることも可能だと言う。 「さらに、被害者と加害者の間には大きな年代差があることが少なくありません。大人と子どもという関係性の中で、大人が子どもをコントロールするのは比較的容易です」 実際、事件が起きたスクールIEは、全教室に防犯カメラを設置し、随時本部で確認していた。それでも元教室長の男は3年以上、被害生徒の担当をしていたことが分かった。生徒は、男から長く指導を受けていることなどから被害を相談できなかったという。