ロンドンで「パレスチナ・アクション」支持の抗議、500人近く逮捕

ロンドン中心部で4日、イギリス政府に活動を禁じられた親パレスチナ団体「パレスチナ・アクション」を支持するデモが開かれた。ロンドン警視庁は、約500人を逮捕したと発表した。この日の抗議については、イングランド北部マンチェスターで2日に起きたシナゴーグ(ユダヤ教の会堂)襲撃事件を受け、閣僚や警察が延期を求めていた。 この日の抗議は、政府が禁止団体にした「パレスチナ・アクション」を支持する団体「Defend Our Juries(陪審員を守れ)」が主催。同団体によると、ロンドン中心部のトラファルガー広場周辺で行われた抗議活動には約1000人が参加した。 警察は4日の日中には、「トラファルガー広場に残る人の大半は見物人で、『パレスチナ・アクション』を支持するプラカードを持っていない」と発表した。 政府が7月に「パレスチナ・アクション」の活動を禁止したことで、同団体を支持したり、かかわりを表明することが違法となった。 ロンドン警視庁によると、4日に逮捕された人数は計492人。禁止団体を支持した疑いで488人を逮捕したほか、4人を酩酊状態での騒乱、暴行、公共秩序違反、別件での指名手配などで逮捕したという。逮捕者のうち最年少は18歳、最年長は89歳だったという。現地時間4日午後10時の時点で、297人が勾留中で、残りは保釈されていた。 警察によると、逮捕者の大半はトラファルガー広場で開かれた集会での行動が逮捕理由だった。ほかに6人が、集会に先立ち近くのウェストミンスター橋で非合法団体を支持する横断幕を掲げたとして、逮捕された。 トラファルガー広場での抗議集会が始まる前、主催団体は広場に近いウェストミンスター橋の北側で「私はジェノサイドに反対する」「私はパレスチナ・アクションを支持する」と書かれた2枚の横断幕を広げていた。警視庁によると、数分後に警官が幕を撤去し、横断幕を広げた人たちを非合法団体支持の疑いで逮捕した。 抗議集会では、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦争で殺害されたパレスチナ人の子どもたちの名前が読み上げられた。 PA通信によると、目を閉じて座り、「私はジェノサイドに反対する、私はパレスチナ・アクションを支持する」と書かれたポスターを掲げていた女性牧師も逮捕され、警察に担ぎ上げられて運び出された。 群衆の中には警察に向かって「恥を知れ」と叫ぶ人もいた。他方、牧師が連行される際に警察官に「守ってくれてありがとう」と声をかける人もいた。 人権団体「アムネスティ・インターナショナルUK」の報道担当は、「ジェノサイド反対」や「パレスチナ・アクションを支持する」と書かれた横断幕の掲示が逮捕理由になったことについて、「静かに座ってこうした標語を掲げている人を逮捕することは、警察の仕事ではない」と述べた。 「一連の逮捕は、イギリスが国際的に持つ人権保護の義務に違反しており、あってはならないことだ」とも報道担当は話した。 警視庁は、「逮捕された多くの人が、自ら広場を離れようとせず、担いで運び出す必要がある」ため、個々の逮捕に時間がかかったと説明した。人一人を強制的に移動させるには、安全のため最低5人の警察官が必要だという。 抗議に先立ち、警視庁はトラファルガー広場に1500人の警察官を配備すると発表していた。 警察によると、同日夜には広場に近い官庁街ホワイトホールに別の抗議団体が集まり、「道路を封鎖し、まずトラファルガー広場、次に議会議事堂前のパーラメント・スクエアへ向かおうとした」。警察は、ホワイトホールでの抗議活動に対し「公共秩序法」に基づき、抗議者を道路から退去させた。 イギリス政府は、今年初めに「パレスチナ・アクション」の活動家たちがイギリス空軍基地に侵入し、軍用機2機に赤い塗料を吹き付けるなどして損傷させた事件を受け、7月にテロ対策法に基づいて「パレスチナ・アクション」を非合法化した。それ以降、同団体を支持したことで数百人が逮捕されており、団体側はこの禁止措置に対する異議申し立ての許可を得ている。 ■首相はユダヤ系コミュニティー尊重を求め キア・スターマー首相は抗議に先立ち、「ユダヤ系イギリス人の悲しみを尊重」するよう呼びかけていた。ユダヤ系コミュニティーの人たちも、この日の抗議を批判した。 しかし、「陪審員を守れ」メンバーのゾーイ・コーエンさんは、自分はユダヤ系として「恐ろしいシナゴーグ襲撃事件に悲しんでいる」一方で、「ガザで殺害され、追放され、飢えさせられている何十万人ものパレスチナ人のことも悲しんでいる」と話した。 コーエンさんは「私たちは複数の残虐行為の犠牲者に対して、同時に思いやりを持ち、心を開くことができると思う」とも話した。 抗議活動中に発表された声明の中でコーエンさんは、「もし今日の追悼集会が中止されていたら、私たちはテロに勝利させたことになる」と主張した。 ■マンチェスターでも 同様の抗議が同日、イギリス中部マンチェスターでもあった。「グレーター・マンチェスター・フレンズ・オブ・パレスチナ」主催で、約100人のパレスチナ支持者がマンチェスター大聖堂の外に集まり、デモ行進に先立って抗議活動を行った。 「マンチェスター・パレスチナ運動」は、この抗議活動が「ガザでのジェノサイド2周年」を記念するものだと述べた。 イスラエルは、ガザでの自国の行動がジェノサイドに該当するとの批判を一貫して否定している。しかし、国連人権理事会の調査委員会が9月に発表した報告書は、イスラエルがガザ地区のパレスチナ人に対してジェノサイドを行っていると認定した。 マンチェスター近郊クランプソールではこの日の抗議の2日前、ヒートンパーク・ヘブライ会衆シナゴーグ(ユダヤ教の会堂)で襲撃事件があったばかり。現地警察によると、シリア系イギリス人のジハード・アル・シャミー容疑者が車と刃物でシナゴーグとその周りにいた人たちを襲い、武装警察に射殺された。 事件でユダヤ系男性2人が死亡し、他に3人が負傷した。 4日の抗議に先立ち、ユダヤ系コミュニティに警備を提供する慈善団体「コミュニティ・セキュリティ・トラスト」は、BBCラジオ4の番組で、抗議者たちは「とんでもなく空気が読めていない」と述べた。 デイヴ・リッチ氏は「人権や自由を大切にしていると主張する多くの人が、ユダヤ系住民が安全に生活し、シナゴーグに通えるようにするための警察資源を奪ってまで、非合法化されたテロ組織を支持するために抗議活動を行っている。それは、パレスチナ人を支持することとは同じではない」と語った。 「両者は同じではない。そして、少なくとも非常に自己中心的で無神経だと思う」とも批判した。 ■英南東部ではモスク火災 「憎悪犯罪」として捜査 4日夜には、英南東部イースト・サセックスにあるモスクが火災によって損傷を受けた。警察は放火の通報を受けて、憎悪犯罪として捜査を進めている。 現地時間4日午後9時50分ごろ、消防が通報を受けて出動した。サセックス警察によると、負傷者はいないものの、建物の正面玄関と外に駐車されていた車両が損傷した。 「この件が地域社会に不安をもたらしていること、そしてその結果としてイスラム系コミュニティが感じる影響について、私たちは理解しています」と、カリー・ボハナ警視は述べ、モスクを含めた複数の宗教施設の警備を強化していると話した。 BBCの取材に匿名を条件に応じたモスクのボランティアによると、2人の人物が正面玄関から侵入しようとしたが、鍵がかかっていたため入れなかった。その後、2人は玄関と外に停められていた車の近くに液体をまき、それに火をつけたという。 「殺人になっていたかもしれない」とボランティアは述べ、モスク内にいた2人は脱出できたと話した。 (英語記事 Nearly 500 arrested at Palestine Action protest in London / Fire at East Sussex mosque probed as 'hate crime')

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